居住感で最大の注目は
全グレード標準装備の「あれ」

 では、要素別に深掘りしていこう。まずは居住感から。タフトは全グレードに、ハーフグラストップ「スカイフィールトップ」が標準装備されている。これがあるからタフトの前席空間は、他車とは違う特別なものになっている。タフトの性格を決定づける最大要素だ。

 軽自動車ではホンダ「トゥデイ」、スズキ「ワゴンRロフト」など採用例はごく限られている。が、サンルーフやグラストップは特段、珍しい装備というわけではない。輸入車なら普通だし、国産でもホンダ「ヴェゼル」、マツダ「CX-60」、日産「アリア」などで装着モデルはある。

 そんなサンルーフ、グラストップはどれも同じかというと、実はそうではない。室内に光を採り込むのは同じだが、乗っていて「ああ、このクルマはグラストップなんだな」と実感できるかは異なる。

 それは、開口面積の大きさよりも、開口部の前端が自分の頭上のどのあたりにかかっているかが関係する。普通に前を向いて走っている状態で、視界の端に空がチラ見えすればグラストップの特別感を味わえる。が、見えなければ感覚的には普通のルーフと大して変わらない。

 タフトの「スカイフィール」とは上手いネーミングだと思うくらい、空がいつも見えるグラストップだ。普通に前を向いていても空が見えるし、左側を視認すると、もっと見える。晴れの日にはもう気分最高である。

 このように作れたのは、前ドアの付け根のAピラーという柱が立ったデザインであることも一因だ。屋根の前端がドライバーよりかなり前にあるため、車体の強度を落とさなくても屋根の開口部を前に寄せられたのだろう。

 そういうクルマで長旅をしていると、オープンカーのように風を感じるまではいかないものの、外の景色を存分に楽しめる。空の色がだんだん黄味がかってくるのが見えて「そろそろ西日の時間かな」、日没後に雲が残照に美しく染まるのを見て「この雲なら明日も晴れかな」などと。

 最近は断熱ガラスの性能が飛躍的に向上しているが、タフトはコスト制約の厳しさから、ハイスペックなガラスは使用していない。直射日光が照りつければ暑いだろう。暑い、日焼けをするのが嫌なユーザーはサンシェードを閉めればいい。

 ダイハツは、コストアップ要因となるグラストップの標準装備をよく決断できたと思う。企画段階では面白いという話になっていても、いざ作るとなるとオプションになりがちだからだ。一方で、グラストップを貫くなら全グレード標準の単一仕様にすることが最もコストダウンになる。トップグレードでも車両価格は176万円。このリーズナブルな価格設定が、タフトの人気を支えているのは間違いない。