当たり前だが、この価値観はロシア国内ではまったく逆になる。「それはロシア人がみんな洗脳されているから」とか「プーチンの恐怖支配で嫌々従っている」という話になりがちだが、モスクワにいる友人に現地の話を聞けば、心の底からロシアの軍事作戦を正しいと信じ、プーチン大統領を支持しているロシア人もたくさんいる。

 そして、日本の国際ニュースばかりを見ていると「そんなのフェイクニュースだ」と思われるだろうが、世界にはロシアを批判していない国もたくさんあるのだ。

 実際、2月24日の国連総会でロシアを非難し、ウクライナの領土保全を支持する決議案を欧州が提出して93カ国の賛成多数で採択された。しかし、アメリカ、ロシアなど18カ国が反対票を投じ、65カ国が「棄権」をしている。

 トランプ大統領は自身でも述べているように「ビジネスマン」なので、「ウクライナ=正義 ロシア=悪」という価値観にとらわれていない。それどころか、真っ向から否定している。会談でトランプ大統領はこう述べている。

「プーチン氏は私と一緒に多くの苦難を経験した。うそっぱちの魔女狩りに遭って、彼とロシアは利用された。ロシア、ロシアと」

 断っておくが、このような主張が正しいと言っているのではなく、「戦争というのはメディアが語っている単純な善悪論で片付けられるものではない」ということが言いたいのだ。

 ロシア側が侵攻を頑なに「軍事作戦」と主張して、NATO側の東侵を批判しているように、ロシアには「ロシアの論理」があって、プーチン大統領にも「戦争の大義」がある。それは西側諸国が「悪」と批判すればするほど、ロシアは反発を強めていく。

 それをおそらくもっともよくわかっているのが、我々日本人だ。

 西側諸国の価値観では日本という国はかつて狂信的な天皇制と軍国主義によって、中国大陸や東南アジアなどを次々と植民地支配をして、ナチスドイツと共に武力による一方的な現状変更をおこなった「悪」である。

 2022年にウクライナ政府の戦意高揚を目的としたSNS発信のなかで、「ファシズムとナチズムは1945年に敗北した」という言葉と一緒に、ヒトラー、ムッソリーニと共に昭和天皇の写真が並べられていたのが、その証左である。

 しかし、当時の日本人たちが「世界を支配しよう」などと目論んでいたわけではないことは、日本人ならば知っているはずだ。