母親は「大丈夫です」と断ったが、繰り返し説得され、利率の悪い保険に乗り換えてしまった。後悔して解約を申し出たものの、局員は「2年ぐらいは契約しておいた方がいいですよ」などと言い、応じてくれなかったという。

 女性がこの局員に電話をかけて問いただしたところ、「お母さまのご希望だったんですよ」と悪びれずに答えたのだそうだ。

全国各地で起きていた
同様の被害の実態

 女性は「母は『だまされてすまなかった』と言って落ち込んでいる。オレオレ詐欺と同じですよ。高齢者は郵便局を信頼しているから、もっと怖いと思います」と語る。

 この他にも、九州、中国、関東などから10件ほどの「被害」の情報が寄せられた。どれも奇妙なほど、経緯が似ていた。

 外回り担当の局員が高齢者宅を訪れる。高齢者は、郵便局だと安心して家に入れる。局員は十分な説明をしないまま、あるいは誤解を与えるような説明をして契約をさせる。家族が契約内容を知り不審に思う。担当局員やコールセンターに抗議をするが、「ご本人が契約書にサインをしている」との理由で返金には応じてくれない――。

 ある郵便局員は「苦情があっても、お客さんをなだめたり言いくるめたりして表沙汰にならなければ、不祥事とは判断されないんです」と打ち明けた。

 家族が繰り返し抗議した結果、保険料の返金を受けた顧客もいたが、その際には、郵便局側から「本件に関する一切の事情を第三者に開示しない」という口止めのような書類への署名を求められている。

 マニュアルでも存在するかのような、高齢者を標的にした詐欺まがいの営業。泣き寝入りしている高齢者が多数いるのではないかと思えた。

「今日は来てくださってありがとうございます。どうしても怒りが抑えられなくて、御社に連絡を差し上げたんです」

 2019年の初夏。山口県のファミリーレストランで取材に応じた男性(37)は、そう語ると、かばんの中から保険の証書を次々に取り出した。1年ほどの間に、母親(71)が契約させられたものだという。

 男性が広げて見せてくれたノートには、これまでの経緯が細かく記録されていた。

「家中を調べると、次々に契約書が発見され事の重大さが発覚」

「月額24万円、とんでもない金額」