「民間の生命保険の人に相談。余りの事柄(件数、金額、頻度)に驚愕され、すぐに解約された方が良いと勧められる」

「天下の郵便局がこんな事をするとは」

「これは犯罪行為である」

軽度認知症の母が
1年で200万支払っていた

 前年6月、母親宅に泊まりに来ていた親族が、郵便受けの中に郵便物がたまっているのを見つけたことが発端だった。

「保険料払い込みのお願い」と書かれた督促状が2通。いずれも差出人は「かんぽ生命」と書かれている。口座の残高不足で保険料が引き落とせなくなり、支払いを求める内容だ。請求された金額は、計42万円にも上っていた。

 親族が母親宅を調べると、次々に保険の証書が見つかった。かんぽ生命の保険が8件、郵便局が販売業務を請け負うアフラックと住友生命の保険が計3件。契約日を見ると、17年5月だけで5件、その後も毎月のように契約が締結されていた。

 母親は、物忘れの症状が進んでおり、後に軽度認知症と診断されている。小学生のころから引きこもりがちの長男(男性の兄)と2人暮らし。男性が尋ねても、母親は「郵便局の人に任せているから」と話すばかりで、母も兄も保険の内容について全く理解していない。貯金残高がなくなっていることにも気づいていなかった。

 月額の保険料は多い月で20万円を超えている。母親の年金収入は毎月13万円で、支払い続けられるはずがなかった。

 貯金口座を確認すると、最初の契約から10ヵ月後に残高は底をつき、直後に75万円の入金の記録があった。調べると、保険料の支払いに充てるため、既に契約した保険を担保にして、かんぽ生命から貸し付けを受けていたのだった。それでもすぐに残高不足になり、督促状が届いていた。

 約1年間で、支払った保険料は200万円以上になる。

 母親への保険営業を担当していたのは近くの郵便局の「金融渉外部」の課長と主任だった。

 男性がそれぞれに電話をかけて問い詰めたが、2人は「ご自宅を拝見したところ、資産家だと思っていました」などと言って反省する様子もない。そして平然と言い放った。

「さらに貸し付けを受ければ、引き続きお支払いできますよ」