容疑者の顔は映すのに
手錠はモザイクの謎
要するに自主規制なのです。「もしなにか言われたら困る」と気にするあまり、現場はほぼ自動的にボカしてしまう。しかも、映像の処理が最近は簡単ですから、編集の段階で「ちょっとでもマズそうなもの」はモザイクになってしまうのでしょう。
しかし、取材に応じた一般人の隣のテーブルに、同業他社のペットボトルのお茶が映っていたからといって、スポンサー企業がテレビ局に文句を言ってスポンサーを降りるでしょうか?まず、言わないと思います。
現場が気にしているのは、上司とか、広告部。つまり「社内」だけです。スポンサーへの配慮でもなく、視聴者への配慮でもなく、「社内配慮」にすぎないものが多すぎると思う。
さらに、店内にテレビが置いてあることがあります。すると何らかの番組が映っているテレビ画面にモザイクがかけられます。
これはいったい、何に対する「配慮」なのでしょうか。他局の番組が映っているから?あるいは画面にタレントが出ているから?よくわかりませんが「そういう可能性もあるのでとりあえず」のモザイクも多いのではないかと思います。
事件の容疑者の「手錠」もモザイクがかけられるのが通例です。逮捕されても容疑者のうちは犯人と確定したわけではないから、ボカすのだそうですが、「容疑者の顔」を映しておきながら、手錠だけボカしたところで意味はないと思うのですが。

下重暁子 著
実はこれ、調べてみたらいわゆる「ロス疑惑」がきっかけだそうです。容疑者の三浦和義は、報道各社をさまざまな理由で訴え、その多くで勝訴していますが、そのなかに「有罪が確定していないのに、手錠をかけられた姿を報道されたことは人権侵害にあたる」として各社を訴えたものがあります。
三浦容疑者は勝訴し、それ以来マスコミ各社の「手錠にモザイク」がはじまった。顔と実名については「犯罪報道は実名」という原則に沿っているということです。
理由は報道への信頼に応え、再犯防止につなげるためなのだそうですが、その結果「顔と実名はOKで手錠だけモザイク」という、ワケのわからない「自主規制」が定着してしまったようです。