べストセラー『「悩まない人」の考え方』著者の木下勝寿氏が「マーカー引きまくり! 絶対読むべき一冊」と絶賛する本がある。『スタートアップ芸人 ――お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』だ。著者・森武司氏は2005年にFIDIAを創業以来、18年連続増収増益を達成し、年商146億円の企業へと成長させた。その成功の裏にはどんな秘密があるのか?本書の学びを深めるため、森氏の幼なじみであり、同じくFIDIAで活躍する西健志氏にインタビューを実施。今回は西氏がこれまで経験した大きな挫折と、挫折が強みへと変わった実体験を伺った。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

【うつで退職→転職で活躍】挫折を強みに変える「職場環境」とは?Photo: Adobe Stock

人生を変えた「うつ」体験

――西さんがFIDIAに入社した経緯を教えてください。

西健志(以下、西):私はFIDIAに転職で入りました。前職を辞めた理由はうつ病でした。 職場の方針と合わなくて、自分の考えを伝えても聞き入れてもらえない。それでも自分さえ我慢すればと思って何年も勤めているうちに、心も体も限界を迎えてしまったんです。

――会社を辞めた後は、何をなさっていたんですか?

西:もう、ずっと自宅療養です。家から出られなくなり、雨戸を閉めたまま暗い部屋で過ごす日々でした。寝ても疲れが取れず、気力が湧かない。薬も合わず、続けることもできない。
自分が今おかしい状態だって頭ではわかっているものの、行動に移せない日々が続きました。

加えて、お金の不安も大きかった。働けないのに、家族がいるし、住宅ローンもある。焦れば焦るほど動けなくなり、まさに悪循環でした。

――お金の不安が、さらにうつを悪化させそうですね。

西:本当にしんどい時期でした。そんな中、友人に「外に出たほうがいい」と言われ、久しぶりに同窓会に参加したんです。そこで森に再会しました。

それぞれの近況の話になったので、私も自分の状況を話して。「そろそろアルバイトとかしようかと思ってる」と言ったら、森が「じゃあ、うちの仕事をやってみる?」と誘ってくれたんです。それが、FIDIAに入ったきっかけでした。

――リハビリも兼ねて入社した感じだったのでしょうか?

西:そうですね。拾ってもらったという感じです。

私としては、友達に刺激をもらいたいという気持ちもありました。
うつのときは、頭ではわかっていても行動に移せない感覚があったので。
間近で友達が頑張っている姿を見られる環境に身を置いたら、自分が変われるんじゃないかっていう期待がすごくあったんです。

――FIDIAではどんな仕事から始めたのでしょうか?

西:最初は通販部門の梱包作業でした。前職と比べて、体も気持ちもすごくラクで、少しずつ社会復帰できました。

気持ちを素直に伝えられるというのも大きかったですね。
無理と思ったら無理と言える。できないことをできないと伝えて、できることを頑張らせてもらえる。

以前の職場では、自分をだましながら働いていました。でも今は違う。環境が変わるだけで、こんなに世界の見え方が変わるのかと驚きました。

そのおかげでどんどん、気持ちも体も社会復帰していけたんです。

「うつ」が自分の強みになった

――その後、どのような仕事に関わるようになりましたか?

西:回復してからは、福祉事業部「アスファイン」の立ち上げに携わりました。障害を持つ方の雇用支援を行う事業です。

面接を担当すると、自分と同じ境遇の人や、似た症状の人がたくさんいました。彼らの気持ちが痛いほどわかる。「私もそうでしたよ」「ここまで回復するのに〇年かかりましたよ」と話すと、会話が弾み、信頼関係も築きやすかった。

自分が辛かったときの経験があるからこそ、辛い人の気持ちに寄り添った支援ができるようになっていたんです。

普通なら「黒歴史」になりそうな経験が、いつの間にか自分の強みになっていたんです。

辛い経験も、思いがけず誰かの役に立つことがある。うつで動けない時期も、周囲に支えられながら、その時やれることを少しずつやってきて良かったと今では思えます。

これは、私をFIDIAへ誘ってくれた森も著書『スタートアップ芸人』の中で、「『いつか』じゃなく『今』やろう」と書いています。

今、人生が苦しいと感じている人に、この経験が届けば嬉しいです。

(本稿は『スタートアップ芸人―― お笑い芸人からニートになった僕が「仲間力」で年商146億円の会社をつくった話』に関連した書き下ろしです)