例えば、耳が遠くなっても補聴器をつければ、聴く楽しみも人との会話も維持することができる。目がよく見えなくても老眼鏡があれば新聞や本を読むことができる。医療技術は進歩しているのだから、その恩恵を受けながら、知恵と工夫で「できること」を取り戻すことも可能なのだ。

一方で、老化は進みこそすれ、戻ることはない。予防や、乗り切るための知恵と工夫にもいずれは限界が来るだろうし、それはそれとして受け入れ、あまり深刻に考えないことも大切だろう。
トータルケアをする上では、精神的・心理的なケアも欠かせない。臓器がそれぞれで関係し合っているように、体と心もつながっている。心が不健康な状態になれば体の状態も悪くなってしまう。
衰えてしまったことやできなくなったことを嘆くのではなく、いや、嘆いてもいいのだが、そこであきらめるのではなく「じゃあ、どうする?」と発想を転換させて「できること」を考えてみる。あるいは、「なるようになるさ」と開き直って、考えることを放棄したっていい。
私は「たいていのことはなんとかなる」ととらえているから、思い悩むこともないし、自分のできることをしながら毎日気ままに生活できている。