冒頭のエピソードで言うと、友人が部下に貼っていたのは「おとなしくて思慮深い」というラベルです。
マネジメントの場合は、本人の自己評価と会社が望む方向性が異なることもあるので、一概に友人の対応が間違いとは言えないところもあります。とはいえ、誤ったラベリングをしてしまうと、相手のモチベーションを下げることがあるので注意しなければいけません。
かけられる言葉によって
人の振る舞いは変わっていく
一方、この「ラベリング効果」は、うまく活用すると対象者の行動を良い方向に導くことも可能です。
ノースウェスタン大学のジョージ・ミラーらによる、シカゴでの小学5年生3クラスを対象にした、「ごみのポイ捨て」に関する実験があります。
実験者は、被験者となる3クラスの児童に、それぞれ異なる言葉を8日間かけ続けました。
Bクラス「ごみはきちんと捨てなさい」
Cクラス(特に声はかけない)
そして実験がスタートしてから10日後、24日後にそれぞれのクラスの子どもたちがごみをきちんとごみ箱に捨てているかについて、実験を開始する前と比較しました。
すると、「きちんとした小学生だ」と言われ続けていたAクラスの子どもたちはきちんとごみ箱に捨てるようになり、声をかけなくなったあとも効果は持続したことがわかりました(注1)。
つまり「きちんとした小学生」と言われ続ける(ラベルを貼られる)と、「きちんとした小学生」として振る舞い始めるということです。逆もまた同じで、「お前は不良だ」とか「お前は悪いやつだ」と言われ続けると、本当に悪い振る舞いを始める傾向が強くなります。

注1 Miller, R. L., Brickman, P., Bolen, D. Attribution versus persuasion as a means for modifying behavior. Journal of Personality and Social Psychology, 1975, 31, 430-441.