マインド・リーディング技術としては、20世紀の中頃から、虚偽検出、いわゆる嘘発見の技術が研究されてきた。われわれは、人の言動から、その人が嘘をついているかどうかを、ある程度推測することができる。しかしこれには限界がある。さまざまなテクノロジーを用いて、より正確な嘘発見をしようというのが虚偽検出技術だ。
虚偽検出技術として現在広く用いられているのはポリグラフ、いわゆる嘘発見器だ。われわれは、嘘をつくときには動揺したり緊張したりするため、さまざまな生理的な変化が生じる。そのような変化のうち、呼吸や脈拍の上昇、皮膚伝導反応の変化(いわゆる冷や汗)などを手がかりに用いるのがポリグラフだ。
ポリグラフを用いれば、おおよそ90%ほどの正確さで虚偽検出が可能だ。しかし、犯罪捜査などに利用するためには、より正確な虚偽検出が可能でなければならない。ここで注目されているのが、マインド・リーディング技術だ。
超高精度で人間の嘘を見抜き
睡眠中の夢すら判定が可能に
ここでは近年の脳科学研究を1つ紹介しよう。この実験では、実験者が被験者にトランプのカードを1枚見せる。これが「クラブの5」だとしよう。実験者は被験者につぎのように指示する。「これから行うテストで、コンピュータに自分の持っているカードを見破られないようにしてください。ただし、自分が持っているカード以外については、嘘をついてはいけません」。
つまり、「ハートの2を持っていますか」と聞かれたら、正直に「いいえ」と答えなければならない。しかし、「クラブの5を持っていますか」と聞かれたら、「いいえ」と嘘をついてよい。
これら2つの回答をする際の脳の活動をfMRIという装置で計測し、両者を比較したところ、いくつかの脳部位で、嘘をついているときに正直に答えているときよりも活動が強まることが明らかになった。
さらに、コンピュータ・プログラムにさまざまな脳活動のデータを学習させたところ、新しいデータの約9割について、脳活動から嘘をついているかどうかを正しく判定できたという。いまのところ、この技術の正確さはポリグラフとほぼ同等だ。しかし、脳の活動を計測するテクノロジーの進歩と、そのデータを分析するコンピュータの性能の向上を考えれば、このような虚偽検出技術は、今後はるかに正確なものとなるかもしれない。