さらに上田社長の推薦を受けて、兵庫県の自動車青年会議所にも参加することにした。会員資格は45歳以下で、会社の後継者と目されること。
入会を申し込んだところ「初の女性会員」となることから事務局は驚いたらしい。
理事会で無事承認され、晴れてメンバーに加わると、新たな仲間を得ることになった。「部下が辞めたいと言うとき、どう対応している?」といった悩みを相談したり、経営者として課題を共有したり、対話から気付きを得て視野を広げていった。
「少しでも会に貢献したい」と積極的に動いて、2年目には推されて副理事に就任した。
唯一の女性会員だから、すぐに名前を覚えてもらえて、周りからどんどん話しかけられる。知り合った他県の仲間から、女性社員に関する悩みが寄せられるようになった。
女性社員をひとり雇ったものの、どう育てたらいいか分からないといったものだ。岡本さんは丁寧に説明した。
「こっちでやっておくから」「女性には無理」といった言葉はNG。まずは「そうか、そうか」と女性社員の言うことを聞いてあげてほしい。

野村浩子 著
「期待されている」と思ってもらうことが大切だ、こう説いて男性経営者の意識転換を促し、女性が成長できる環境づくりを説いて回った。
いまや社長に次ぐナンバー2のポストに就く岡本さんは、すべての従業員の成長に目配りをする。
パートタイム従業員には「期待している、誰かの役に立っている」と折に触れて伝える。正社員には「いつまでも下の立場にいたら、後輩たちが上がってこられない」と発破をかける。
後輩のエンパワメントは、社内にとどまらない。「車業界の女性たちが、少しでも働きやすくなるようにしたい」と言う。
育ててくれた会社に、そして車業界に「恩返し」をしたいという思いが、いま岡本さんの原動力になっている。