中でも印象深かったのは北川景子さんで、自分で書いた原稿まで男前でした。仁科亜季子さんはガンとの闘病を全て告白し、強烈なインパクトを残しました。のんさんは顔が小さく背が高くて美しく、事務所問題さえなければ大スターになっていたと思います。
大女優は遠くから見てもわかる
最もオーラが強いのはやはり「あの人」
さて、ここまで個別の女優のエピソードについて述べてきましたが、総じて気になるのが彼女たちのオーラです。色々なパーティーや葬儀で女優さんたちを見かけますが、遠くからでもすぐわかる人と、近付かないと全然気づかない人がいるのです。
ナンバーワンのオーラを放っていたのは、やはり吉永小百合さんでした。遠くからでも「吉永小百合が来た」ということはすぐわかります。たとえば、1985年に開催された第1回東京国際映画祭のパーティーでは、当時『愛の水中花』のヒットで大人気だった松坂慶子さんのオーラがすごいと思いましたが、その向こうにもっとキラキラ光っている人がいました。吉永さんです。
松坂慶子さんとは、その後「大河ドラマ研究」というテーマの座談会で長時間話しましたが、すっかりふっくらして「こんなおばちゃんになっても、それはそれでその役柄を演じるのが面白いのよ」。吉永さんのように、誰もが憧れる女優であり続けるのか、好きな役柄を自由に演じ続けるのか。それはその女性の人生観だと思いますが、その人にしかない天性のオーラもあるのだと思います。
大竹しのぶさんもそんな人でした。巨大な中華料理店で偶然見かけたとき、遠くにいるのがすぐわかったほどです。
最後に、冒頭で触れた広末涼子さんの話に戻りましょう。以前の記事でも触れましたが、私はデビュー当時、事務所で見かけた彼女に芸能人のオーラを感じず、事務所のアルバイトと勘違いしたくらいでした。しかし、その後彼女と仕事をした監督やカメラマンの中には、「広末にしかないオーラがある」という人もいます。
私が見た広末さんと芸能関係者の間でオーラを放っていた広末さんは、別人格なのでしょうか。いつオーラが出て、いつ出ていないのかに、彼女の心の闇を解く鍵があるではないか――。今回の原稿を書いていて、ふとそんなことを考えました。広末さんの事務所もケアに努めると宣言していますから、専門家とよく話し合うことが、彼女の未来を決するのではないでしょうか。
(元週刊文春・月刊文藝春秋編集長 木俣正剛)