実の兄の夫妻が隣の越谷市に住んでいるので、それを頼って夫婦で2023年9月に来日し、11月に難民申請をした。

 支援者の女性は診療所の窓口で、連絡先などを確認しながら問診票に記入する手伝いをした。彼女によると「生まれる1週間前に来日するクルド人の妊婦もいる。そうしたクルド人が急増している」と話す。

「今、川口市のクルド人の間で出産ラッシュです。日本で子供を産めば強制送還されないとのうわさが出回っているらしい」

 困窮したクルド人に入院助産制度を紹介しているが、「正直言って、妊娠して日本に来るクルド人まで支援することはちょっとやりたくない」と彼女は表情を曇らせた。

暴走行為をSNSに投稿
中退・非行化する外国人の子ども

 もう1つ、矛盾のしわ寄せが及んでいるのが教育分野である。

 退去強制令書を発付された仮放免(編集部注:入国管理局に収容されている外国人が、健康上の理由や人道上の理由などにより、一時的に収容から解放される制度)中の子供であっても、地元の小中学校で教育を受けられる。

 すでに、大学、大学院に進むクルド人の若者も現れている。だが、家庭環境に恵まれず、能力が不足した多くの子供たちが非行化しており、彼ら自身がXに、車の暴走行為や解体工事現場で働く自らの姿を映した映像を投稿している。日本語ができず中学1、2年生で学校からドロップアウトするクルド人の生徒が多い、と地元では言われている。

 放置していては、これらの若者が反社会勢力に組み込まれるなど、長期的に地域社会にさらに大きな負の影響をもたらすだろう。

 川口市教育委員会によると、2024年5月1日現在、市立小中学校の児童生徒(以下、生徒)数4万2000人(以下、概数)のうち、外国国籍は3100人であり、そのうち中国国籍が2100人、次いでトルコ国籍が400人、フィリピン国籍が170人となっている。

 外国人の生徒数は2022年度2400人、2023年度2700人、毎年トルコ国籍者の割合は13%程度であり、人数は300人、350人と毎年50人ずつ、かなりの割合で増え続けている。