意見書は「一部の外国人は生活圏内である資材置き場周辺や住宅密集地域などで暴走行為、煽り運転を繰り返し、人身、物損事故を多く発生させ、被害者が保険で対応するという声がある」「現在、地域住民の生活は恐怖のレベルに達しており(中略)その他多くの善良な外国人に対しても差別と偏見を助長することになって」いると訴えている。

 なぜ、この時期に決議が採択されたのか、ある市会議員は説明する。

「ほかの市会議員も、無保険で運転するクルド人の車に事故を起こされたなど、市民からたくさんの相談を受けていた。そろそろ皆、きれいごとだけではやっていられない、という感じになっていた」

クルド人100人が殺到
機動隊も出動する騒ぎに

 状況の悪化は看過できないとの意識が高まっていたところに、偶然ではあるが、地域を揺るがす事件が起こった。

 意見書採択から5日後の7月4日、川口市中央部の西新井宿にある「川口市立医療センター」前に、クルド人100人ほどが集まって、機動隊も出動する騒ぎとなり、救急搬送の受け入れが5時間半停止したのである。

 同日夜、トルコ国籍の男性が複数のトルコ国籍の男から刃物で切り付けられた。被害者が搬送された医療センターに双方の親族や仲間が押し掛け、救急外来の扉を開けようとしたり、大声を上げたりした。

 現場は翌日午前1時ころまで混乱し、4人が殺人未遂で、警察官、機動隊員への公務執行妨害容疑で2人が現行犯で逮捕された(2023年7月30日付産経新聞電子版)。

 同センターには埼玉県南部を担当する3次救急医療施設「救命救急センター」が併設されており、重篤な患者を24時間受け入れている。対象になる患者が受け入れ停止の時間にいなかったのは幸いだったが、地域の安全に深刻な影響を与えた事件だった。

 この事件は傷害事件だけをとりあげても、刃物を恐らく常時携行しているという点で問題だが、とりわけ、多数が集まって一触即発の事態になるという展開の異様さは、クルド人に対するイメージ悪化の大きな節目となった。

 在日外国人でも、例えば中国人、ベトナム人の場合、対立するグループがSNSで呼びかけて100人ほどが集合し、諍いになるといった事態はあまり考えられないだろう。