言い換えると、願望をすでに実現したような気分になると、願望の実現に向けて積極的に行動を起こそうとはしなくなるということです。

「幸運」を呼び込みたいなら
まずは環境を整えよう

 引き寄せの法則で大切なのは思考であり、願望は実現すると信じることです。引き寄せの法則を提唱する人たちは、ただリラックスしていればいい、問題はすでに舞台裏で解決していると主張することもあります。

 この言葉を信じると、緊張感や切迫感が失われるので、短期的にはいい気分になるでしょう。しかし同時に、何とかしようと行動を起こす意欲も殺がれてしまうのです。

 それでは、ポジティブシンキングの利点と、精神が持つ力を活用するには、どうすればいいのでしょうか?それらを活用しながら、現実逃避のファンタジーで満足してしまわない方法は、はたしてあるのでしょうか?

 ただ願望は実現すると夢想するだけで、何も行動を起こさないのは、どうやらむしろ害にしかならないようです。

 その一方で、願望を実現するために行動を起こす自分を視覚化すると、実際に行動を起こす確率が高くなる。

 つまり、ここで大切なのは、ファンタジーの質と中身であるようです。

 ポジティブな思考や夢には、たしかに欲しいものをはっきりさせる力があります。とはいえそれだけでは、実際に行動を起こすことにつながったり、幸運を引き寄せたりはできないのです。

書影『「運のいい人」の科学 強運をつかむ最高の習慣』『「運のいい人」の科学 強運をつかむ最高の習慣』(ニック・トレントン著、桜田直美訳、SBクリエイティブ)

 それでもなお、引き寄せの法則はまだまだ人気があります。それはおそらく、私たちの中に、実際に努力をしないで願望を実現したいという気持ちがあるからでしょう。

 しかし残念ながら、それは無理な相談です。実際、努力もしないで結果だけを求める怠け心を捨てられない人は、むしろ望まない結果を手に入れることになってしまうのです。

 つまり、こういうことです。人生に「幸運」を呼び込みたいなら、ポジティブなことが起こるような環境を整えなければなりません。夢の仕事を手に入れ、収入を増やしたいという願望があるなら、まずその仕事にふさわしい人物になる必要がある。

 つまり、勉強し、スキルを磨き、必要な人脈をつくる努力が欠かせないということです。