疋:それも含め、経験がすごく大事だと思っています。絶対音感って、ポンと音を聴いて「それミの音、それファの音」というのが分かる能力です。あれ実はちっちゃい頃からやらないと身に付かないものなんですよ。逆に言うと生まれつきではありません。

F:なんと。絶対音感は生まれつきの才能なのかと思っていました。

疋:それは違います。6歳ぐらいまでにどれだけの経験をしてきたかによって、絶対音感は決まります。生まれつきではありません。ただ普通に生きていると、ポーンって聴いて「これはミの音ですね。これはファの音ですね」なんてお父さんやお母さんが言う家は滅多にありませんよね。だから絶対音感に関しては非常に難しい。

 でも一方で、プロのギタリストが本当に小さなうちからずっと習ってギターを弾いてきたかっていうと、そんなことはないですよね?

F:中学くらいで、女性にモテたくて始めるヤツがほとんどですよね(笑)。

サウンドマイスターが耳を守るためにやっていること

疋:そうそう(笑)。いかに集中力を持って経験するか、いかに長く経験するか。その経験をどう積んできたかによって、未来は変わってくると思います。音楽大学を出なきゃダメとか、そういうものでは全くないですね。

F:日常生活はどうですか。特に耳を大事にされていたりとかはしますか?

疋:一つだけやっていることがあります。イヤホンをするときには絶対に大音量でかけない。これ絶対です。有毛細胞という耳の中の毛みたいな細胞がいっぱいあるんですが、それがパチンって倒れちゃったり抜けてっちゃったりすると、二度と治らないので。

「イヤホン難聴」って本当にヤバいんですよ。その代わり、スピーカーなら結構大きな音でも大丈夫。私もクルマの中でオーディオの評価させてもらう時なんて、かなりデカい音をガンガン掛けてチューニングしています(笑)。

アウトランダーの前でパチリ。ありがとうございました!アウトランダーの前でパチリ。ありがとうございました! Photo by A.T.

 3回にわたってお届けした、音づくり職人「サウンドマイスター」のインタビュー。お楽しみいただけましたでしょうか?

 ヤマハのサウンドマイスターは、測定器ではなく耳で音を見つめ、三菱のエンジニアはトルクレンチではなく音楽でクルマのネジを締め上げる。

 どちらも腕利きの職人であり、なにより愛すべき変人である。

 機会があれば、ぜひ三菱のディーラーへ、アウトランダー試乗を兼ねた試聴に行ってみてください。感動すること請け合いです。

 それではみなさま、また来週!

ギターとともに暮らすための家具

 こんにちは、AD高橋です。

 今回のインタビューは、浜松にあるヤマハ本社にお邪魔して行われました。本社ロビーでヤマハのみなさん、そして三菱のみなさんと挨拶をした後、2024年2月に完成したばかりの新オフィス棟ロビーを案内していただきました。ここに面白いものがたくさん展示されていたので、今回はその一部を紹介します。