在庫はシンプルに「回転率」でマネジメントする

田中 在庫管理を測る指標、モノサシには何を使っています?

望月 在庫に関してはシンプルに回転率でマネジメントしています。目標売上と在庫の適正水準に注意を払います。たとえば、在庫を1億円分持っていたら、3回転させれば売上は3億円になります。そんな感じでシンプルに目標売上から適正な在庫回転率と保有在庫の水準を決めています。

田中 「こういうふうにやるんだ!」という方針が明確でいいですね。管理指標はシンプルなほうがうまく行きますから。それを機能させるための工夫って、何かありますか?

望月 仕組み化がとても大切だと思っているんです。私がいる、いないに関わらず、業務はきちんと運営される必要がありますから。私が「すぐ社長にしてください」とお願いして、それなりに社長が務まっているように、私は地位が人をつくると思っています。だから、地位、つまり、責任ですね。これを与えるようにしています。たしかにプレッシャーでダメになってしまうケースもありますが、そうなったら、そうなったで、みんなで考えて動きますし。そういうアクシデントも織り込んでやればいいわけですから。

田中 社員には失敗する権利もありますから、それを社長が奪ってしまってはダメだということですね。

望月 はい。なかなかすべてが思ったようには行きませんが(笑)。

保田 ネット通販の直販などで在庫の回転率が上がったことはわかりましたが、B2Bのところは、あまり変わっていないんですか?

望月 営業が在庫を見るように意識が変わったので、B2Bでも在庫の回転率は上がっています。以前は、在庫は積み上がる一方でしたから。あとは先ほども言ったとおり、在庫が減るまで仕入れない、作らない、ということを徹底するようになったので、当然、回転率も上がります。

保田 自社のオリジナル製品だけでなく、他社商品も仕入れて販売するとのことですが、狙いはどこにあるんでしょう?

望月 他社の商品を扱うことは、それはそれで良さがあるんです。純粋に商品の良さもありますし、すべて自社で作ることの在庫リスクがありますから、リスク分散という効果もあります。

保田 今後、B2BとB2Cのバランスはどうやって取っていく計画ですか?

望月 それは悩ましい課題ですね。単に売上をつくることだけ考えればB2Bだけで売上も達成できます。でも、B2Bという卸に極端に偏重するのは、回収に5ヵ月もかかるだけにキャッシュフローが安定しないというリスクが大きくなるんです。そのため、観光事業やネット通販、海外事業を強化してトータルで売上50億円を目指すストーリーを今は描いています。

保田 ちなみに、ジュエリー商品のロス率、つまり、陳腐化にともない除却する商品はどのくらいあるのでしょうか?

望月 デザインなどのトレンドは変わりやすいので、基本的には、利益の何%を処理すると決めています。「これはもう売るのは難しいかな」「いま地金に変えたほうがいいんじゃないかな」という私の判断で最終的には決めます。そもそも、昔は好き勝手に作っていたのでロスが結構ありましたが、近年は、社員も真剣になって開発するので、大きなロスにつながるような商品を作らなくなりました。

田中 ジュエリーの場合、在庫が滞留して売れなくなっても、また地金に熔かして、作り直すことができるから、本当の意味でのロス、つまり捨ててしまうことがないわけですね。

望月 そうです。ただ、まずはセールやキャンペーンなどの創意工夫できちんと販売するということですね。地金にするよりもお客様に買っていただくことです。リングを地金に熔かす、石を石屋さんに渡して引き取っていただくというのは最終手段です。