情報技術が進化したことで、世の中には合理化の動きが急速に広がりました。たとえば、従来は10人でやっていた仕事を、情報技術を駆使して8人でやってみようとする。この程度の合理化であれば、新たに手に入れた技術で十分にカバーできるので、何ら問題はありません。
すると、次に「8人でもできるなら、7人ではどうか」となる。実際やってみると、すこし苦しい感じはするものの、一人あたりの仕事量を多少増やしたり、残業することでカバーはできる。本来なら、この「すこしがんばれば何とかなる」レベルで止めておくべきでした。
しかし、いったん加速しだした合理化の動きは止められず、「では、6人で」「もっと削って、5人ではどうか」と過度な合理化が進んでいく。いくら情報技術が進化したとしても、実際に動くのは人です。限界はあります。結果、社員全員が「自分の目の前の仕事をこなしていくので精一杯」という状態が恒常化してしまいます。これが集団皿回しです。
集団皿回し状態の会社では、どれだけスキルが高くヤル気のある社員でも動くことはできません。動きたくても、動けないのです。
社員に自発的に動いてもらいたいならば、何よりも回す皿の数を減らす、つまり仕事の絶対量を減らして、集団皿回し状態から脱する必要があります。
集団皿回しに陥ることなく、健全な会社経営を行なうには、トップである社長は次の3つの意思決定を明確に示さなければなりません。
「新たに始めること」
「継続すること」
「やめること」
この3つのバランスを考えて事業を取捨選択していかないと、すぐに経営は行き詰まります。特に「やめる」決断は重要です。
そもそも社長という生き物は、新しいことを始めるのが大好きです。「最近話題になっているから」「将来性があるだろうから」「直感的に閃いたから」などと言って、新しい事業をやりたがります。これも社長の「動きすぎ」のひとつです。