覚えても忘れてしまっては意味がない。さらに、知識として使えないのであれば、ただの徒労である。15万部を突破した『読んだら忘れない読書術』著者の樺沢紫苑さんを迎え、情報を知識につなげる方法について語ります。(取材・文/狩野南 撮影/安達尊)
アウトプットさえしていれば忘れない
精神科医、作家。
1965年、札幌生まれ。札幌医科大学医学部卒。2004年から3年間、米国シカゴのイリノイ大学に留学。帰国後、(株)樺沢心理学研究所を設立。Facebookフォロワー15万人、メルマガ、YouTubeなどインターネットメディア、合計40万人以上を駆使し、精神医学・心理学をわかりやすく発信している。月20冊以上の読書を30年以上続け、読書数は6000冊を超える。新刊『読んだら忘れない読書術』(サンマーク出版)は15万部のベストセラーとなっている。著書は、『メールの超プロが教えるGmail仕事術』(サンマーク出版)、『「苦しい」が「楽しい」に変わる本』(あさ出版)など21冊。「中居正広のミになる図書館」(テレビ朝日系)などテレビでも活躍中。
佐藤 樺沢先生の『読んだら忘れない読書術』、たいへん面白く読ませていただきました。本の内容を忘れないためには、人に話したり、レビューを書いたりする「アウトプット」が大切、ということを書かれていますよね。
私も『ずるい暗記術』でその点を強調したんですが、意外とアウトプットを重視した本って少ないと思いませんか?
樺沢 そうなんですよね。記憶というと、インプットだと思っている人が多いけれど、本当はアウトプットなんですよね。でも、「インプット過剰のアウトプット不足」という人が多い。
佐藤 確かに。勉強したり、本を読んだりしていても、それだけで満足してしまって、そこで得たものを生かすところにまでいっていないように思います。
樺沢 『読んだら忘れない読書術』にも書いたのですが、要は「情報」と「知識」の違いなんですね。今日必要なものが情報、10年後にも残っているのが知識です。
今はインターネットで何でも検索できる時代ですが、その90%以上は情報なんです。
たとえば、1年前の新聞を読んでもほとんど役に立たないでしょう? それは、情報だからです。情報のなかにも役に立つものはありますが、ネットだとほとんどが1回見て終わり。1年後には全部忘れているはずです。忘れないためには、100個の情報を1回ずつ見るより、30個の情報を3回ずつ見たほうがいい。
佐藤 アウトプットすることで、情報も知識になるということですね。うちの弁護士にもよく「この本を読んでおきなさい」と言うんですけど、みんな読んだ後に内容を説明できないんです。「それは読んでないのと同じでしょ」って説教するんですけど(笑)、結局、情報を得ただけで自分の知識になっていない。
樺沢 アウトプットしないと、記憶に残らないし、身につかないですからね。
佐藤 やはり、アウトプットは、記憶するうえで核になるもの、いちばん大事なものなのかなと思います。
樺沢 そう。一言で言ってしまえば、「アウトプットさえしていれば忘れない」んです。