東京電力 解体#1Photo:Bet_Noire/gettyimages

東京電力ホールディングス(HD)の子会社で、再生可能エネルギー事業を担う東京電力リニューアブルパワー(RP)を一部売却する構想が、ダイヤモンド編集部の取材で判明した。脱炭素ブームで注目が集まる再エネを担う東電RPは、東電グループの虎の子事業である。特集『東京電力 解体』(全5回)の#1では、東電HDが虎の子事業を手放そうとしている裏事情、そして虎の子事業に食指を動かすプレーヤーに迫る。(ダイヤモンド編集部 堀内 亮)

脱炭素ブームで最も注目の再エネ事業が
売却される東電の裏事情

 電力業界の王者には似つかわしくない、おどろおどろしい表現が、東京電力ホールディングス(HD)の中期経営計画「第4次総合特別事業計画」にサラリと載っていた。

「価値の創出に大きく貢献できない、又は不採算の事業については撤退・縮小するなど、選択と集中を行い、グループ全体の事業ポートフォリオを再構築する」

 東電HDが2012年に実質国有化されて以降に策定した中計では初めて、自ら不採算事業の撤退・縮小を打ち出したのだ。東電HDのある幹部は「東電生え抜きの人物からは、こういう表現は出てこない。小林さんの意向が反映されたのだろう」と分析する。

 小林さんとは、経済同友会代表幹事や三菱ケミカルホールディングス会長などを歴任した大物経営者の小林喜光氏。政府の後押しもあり、東電HDは今年6月、1年以上も空席だった会長職に小林氏を迎えた。

 小林氏は、テロ対策の不備が見つかった柏崎刈羽原子力発電所の再稼働や業績不振の小売り事業など、課題が山積する東電HDの経営再建を託された。

 では、課題山積の東電HDにとって不採算事業とは何か。ある東電OBは、電力業界でまことしやかにささやかれる小売り事業のことを指すとみた。

 小売り事業を担う東京電力エナジーパートナー(EP)は、電力小売り全面自由化で顧客流出が止まらずに業績不振が続いている。東電EPの2021年3月期の経常利益は、前年比9割減の64億円にとどまった。東電EPが真っ先に撤退、縮小の対象になるのは、時間の問題とみていた。

 ところが、である。東電グループだけでなく、エネルギー業界をも驚愕させる仰天構想が判明した。東電HDは東電EPに加えて、再生可能エネルギー事業を担う東電リニューアブルパワー(RP)まで一部売却する構想を水面下で議論していることが、ダイヤモンド編集部の取材で分かったのだ。

 東電RPは、脱炭素ブームで最も注目される東電グループの“虎の子事業”である。21年3月期決算では、東電RPは東電EPの7倍を上回る481億円の経常利益をたたき出している。

 ではいったいなぜ、東電グループの虎の子事業である東電RPを手放す必要があるのだろうか。その裏事情とは。そして、虎の子事業に食指を動かすプレーヤーは誰なのか。