野地 慎
米国の物価は年初からの国際商品市況の高騰によって、一時的に押し上げられている面が小さくない。その影響は2022年初めには、そこに、テーパリング(量的緩和の縮小)開始が重なりそうだ。テーパリングによる買い入れ額減少の影響が大きい物価連動国債の利回り(実質金利)が過度に上昇するリスクがある。その場合、商品市況下落、ドル高、株価下落といった市場の混乱が起きかねないことに注意が必要である。

FRB(米連邦準備制度理事会)は、「平均インフレ率目標」の施策を転換し、年内にも量的緩和縮小を開始しそうだ。ドルの実質金利上昇期待でドルは高くなり、資源など商品価格は下落基調にある。当面、この流れは変わりそうにない。

通常であれば実質金利低下は一時的な長期金利低下をもたらすが、最終的にインフレ率上昇を通じて金利上昇要因となる、しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ率の目標上振れ容認姿勢を転換したことで、早期の金融引き締めでインフレが抑制されるとの予測につながり、実質金利低下が金利上昇をもたらさない可能性が高まっている。

6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で2023年への利上げ前倒しを示唆したFRB(米連邦準備制度理事会)。目標である2%を超えるインフレ率を容認する姿勢を改めたようだ。通常、利上げ示唆で上昇することが多い長期金利は今回、低下した。それは、長期でのインフレ抑制を市場が織り込んだからである。

FRB(米連邦準備制度理事会)は、量的緩和の縮小は慎重に進める方針を示唆している。雇用者数の伸び鈍化もあり、米国の10年国債利回り上昇は一服し、実質金利は低下した。ドル安観測が強まるなか、ドルが売られる相手として人民元が浮上している。中国が金融緩和を進めにくい状況下、しばらくは人民元高が続くだろう。

日本のワクチン接種率はG7の中で最低である。接種の遅れは感染の収束を遅らせるだけでなく、金融市場にも影を落とす。米国の長期金利がピークをつけたにもかかわらず、円はドルに対して安くなっている。株価を見ても、米国株が上昇基調を続けている一方、日本株は停滞気味だ。この雰囲気を変えるのは、ワクチン接種の早期の進展しかない。

年初以降、数次にわたり株式市場の下落要因となってきた米国の長期金利(10年国債利回り)上昇。要因別に分析していくと、今後さらに上昇するかの鍵を握るのは、5年国債の利回りであり、利上げの動向である。当面、上昇させるだけの材料は見当たらず、長期金利のピークアウトは近い。

昨年は4月以降、一度も1%を上回らなかった米国10年債利回りは年明け早々に1%を上回った。そこからの上昇ペースは相当に速いものとなり、ついに1.6%を上抜けてしまった。

長短金利は、金融政策や債券需給の影響を受ける実質金利の部分とインフレ期待の2層に分けることができる。

トリプルブルー(民主党によるホワイトハウス&上下院支配)の政治が始まるとの期待をよりどころに、年明け早々に1%を上回った米国10年債利回りだったが、その後も上がり続け、一時1.2%付近まで上昇している。

米国の10年債利回りや30年債利回りは6月の最高水準を明確に上回ってきた。

新型コロナウイルスの感染拡大で世界経済が大きく減速した今年もあとわずかとなってきた。金融市場を振り返ると、各国が金融緩和政策を講じる中、実質金利への関心が高まったといえる。

バカンス明けの欧州で新型コロナウイルスの感染が再び広がってきた。

FRB(米連邦準備制度理事会)は8月27日のジャクソンホール会議におけるパウエル議長の講演に合わせ、「長期目標と金融政策戦略」と題した声明文を公表した。

FRB(米連邦準備制度理事会)による強力なQE(量的緩和)政策を背景に0.5%割れ目前まで迫った米国10年債利回りだったが、8月に入りリバウンドし始め、0.7%台を回復するような動きを見せている。

各国の株式市場が漠然とした景気回復期待と金融緩和に伴う過剰流動性などをよりどころに堅調な推移となる中、米国では新型コロナウイルスの感染拡大が止まっていない。

6月9日、10日に開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)においては、3月以降に示された緩和策と実質ゼロ金利政策の維持が決定された。市場参加者が注目していたのは3月のFOMCで公表が見送られた経済見通しであった。

FRB(米連邦準備制度理事会)は、新型肺炎感染拡大懸念で市場が大幅に混乱した3月から政策金利を実質ゼロに引き下げたが、そこから2カ月が経過しても米国では感染拡大の終了が見えてこない状況だ。

欧米における新型肺炎感染拡大をよりどころに混乱したグローバル市場であったが、4月に入って少しずつ落ち着きを取り戻している。

イタリアのコロナ禍後に残る財政悪化と長期金利上昇懸念
新型コロナウイルスの中国における感染拡大が止まりつつある中、欧米諸国では急速な感染拡大が観測され始め、特に欧州においては問題が深刻化している。中でもイタリアにおける感染者数、死者数の増加が目立っている。イタリアの株価指数が年初から30%超の下げを記録し、10年国債利回りはドイツなどその他のユーロ圏諸国の国債利回りが低下する中で大きく上昇している。まさにイタリア売りの様相だ。
