
野地 慎
米国の潜在成長率は徐々に低下10年債利回りの上昇幅は限定的
米中貿易摩擦などに伴い景気の先行きに不透明感が生じた場合、金融政策でこれに対応する旨をFRB(米連邦準備制度理事会)が示唆する中、米国債市場は今後複数回の利下げを織り込む形となっている。

米国の雇用、所得は共に良好 FRB利下げの公算は小さい
米トランプ政権が中国からの輸入品への関税率を引き上げたことを受け、世界の株式市場には再び不透明感が広がった。ただ、新興国株に比べ、米国株の下げ幅は限定的だ。

ヘッジ費用低い南欧国債に買い景気鈍化での財政悪化に要注意
3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では参加者のFF(フェデラルファンド)金利見通しが大幅に引き下げられ、FRB(米連邦準備制度理事会)のバランスシート縮小の9月での終了が決められた。これを受け米国10年債利回りは一時2.3%台まで低下した。

「クリスマスの悪夢」とされた大幅な株安を目の当たりにしたFRB(米連邦準備制度理事会)は、年明け以降、急速にハト派にシフトし、当面の利上げが見送られるとの思惑が市場では支配的だ。

欧州は利上げなしで緩和も ドイツ10年債はマイナスへ
FRB(米連邦準備制度理事会)による「利上げ停止」シナリオの現実味が増す中、米国10年債利回りは2.7%前後で居心地が良くなったように見える。

日本銀行の円高対応策は長期金利低下容認か
新年早々、為替市場では円高が急激に進んだ。市場参加者が少ない中、取引量の少ないオセアニア市場の早朝に米大手IT企業の業績下方修正に係る報道が流れ、株安・米金利低下への思惑からドルを売る動きが殺到し、一気にドル円が105円を割り込んだ。

原油安で米長期金利低下も実質金利下がらず緩和効果薄い
原油価格の11月以降の大幅下落を端緒とし、米国10年債利回りは低下傾向を続けている。12月以降については「一時休戦」となったはずの米中貿易摩擦問題について、米国側が「中国製造2025」への干渉も視野に入れつつあるとの懸念が再浮上した。それが米国株安を介して米国10年債利回りを押し下げる格好だ。3%を割り込んだ同利回りは2.9%レベルも割り込んでしまった。

財政拡張懸念で米長期金利上昇 実質金利も上昇し原油価格下落
米ニューヨーク市場の原油先物価格は、11月に入ってから下落傾向が続く。ついに10月3日の年初来高値からの下落率が20%を超えてしまった。

米長期金利上昇は景気の強さと財政拡大リスクがもたらした
米国経済は堅調だが、特段に強い経済指標は出ていない。もちろんFRB(米連邦準備制度理事会)の漸進的な利上げに向けたスタンスも不変であったが、5月の高値水準を上回ったことをきっかけに、「チャートを上抜けた」「売りが売りを呼んだ」、つまり相場の論理で利回りが急上昇した格好といえる。

利上げによる米長短金利逆転は 景気後退の予兆の公算小さい
減税効果などから米国経済の好調が続いており、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げも進んでいる。政策金利の影響を受けやすい2年債などの米国債利回りは上昇傾向を続けており、短中期債利回りと長期債利回りが並びかけている。

足元で変動率高い日本の20年債 低利回りでも外債の方に安心感
7月末に日本銀行が長期金利を0%程度に誘導する目標自体は維持しつつ、変動幅拡大を容認するとしてから1カ月弱が経過したが、同時に「長短金利が当面、超低水準にとどまる」とのフォワードガイダンスも示したため、わが国の債券市場も落ち着きを取り戻しつつある。

日本の超長期国債利回り低下原因は米国長短金利差縮小
6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で注目されたドットチャート(メンバーによるフェデラルファンド金利見通しの分布)においては、2019年内に3%程度まで利上げを行うことで今回の金融政策正常化が終了するとのコンセンサスが示された。

米国金利上昇→新興国不安が結局、米国景気を鈍化させる
6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では市場参加者の予想通り0.25%の利上げが決定されたが、最大の注目を集めたのは、FOMCメンバーによるFF(フェデラルファンド)金利見通しの分布を示したドットチャートであった。

米長期金利上昇でドル高日欧金利に上昇加速懸念
投機筋によるショートポジションが積み上がる中、かつての重要な買い手であった本邦投資家の買い控えにFRB(米連邦準備制度理事会)によるバランスシート縮小も加わって、米国債市場の需給の悪さが目立つ状況だ。

米長期金利上昇もドル安傾向 日独の長期金利は上がらず
2月に公表された米国の雇用統計で賃金の伸びが市場予想を大きく上回ったことをきっかけに、米国10年債利回りはレンジ上限を突破し、以降、3%をうかがう水準での高止まりが続いている。グローバル市場の中心である米国の10年債利回りの上昇は、一般的に他の先進国の長期金利上昇を促しやすい。

米国債の運用リスクが高まり関心集めるユーロ圏国債投資
米国10年債利回りが3%の大台を視野に入れる中、日本銀行のマイナス金利政策下で運用難となっている本邦の投資家から「米国債投資を積極化」との声がなかなか聞こえない。

米金利上昇はインフレが背景潜在成長率向上を示唆しない
原油高や株高が促す期待インフレ率の上昇が後押しとなり、米国10年債利回りは2017年3月の水準を上回ったが、そこに米国の賃金上昇期待が加わり、同利回りはさらに押し上がり、3%が視野に入った。

ユーロと原油ピークアウトで米10年債利回りも低下へ
米国10年債利回りは年明け早々から上昇基調を強め、ついに2017年3月の最高水準を上回ってしまった。要因の一つが日欧中央銀行の出口期待。日本やユーロ圏の超低金利が修正されれば、それぞれの地域からの米国債投資が減少するとの思惑が強まったとの見解だ。

原油価格動向との相関大きい 米国債利回り低下リスクに留意
今年を象徴する出来事は、各国株価の上昇であったと考えている。つまり、今年はリスクオンの1年であったといえる。債券市場に目を転じると、日欧は中央銀行が引き続き強力な金融緩和政策で金利の上昇抑制を行う中、長期金利がほぼ横ばい状態で年末を迎えている。他方、米国はFRB(米連邦準備制度理事会)が利上げを続けながらも、長期金利は年前半のピークから低下している。

年末にかけ米国債買い戻され米金利急低下、円高の公算も
9月初旬に2%付近まで低下した米10年債利回りはその後、10~11月にかけて上昇基調を保ち、10月下旬には2.5%に迫るような動きも見せた。米日10年債利回り差と強く連動するドル円が115円台に近づいたことからも、米10年債利回りの動向にいつも以上に注目が集まっている。
