
野地 慎
FRB(米連邦準備制度理事会)の急速な金融引き締めで円安ドル高が進んできた。ユーロも対ドルでは下落基調にある。弱者連合ともいえる円とユーロだが、今後の反転のペースではユーロが円を上回りそうだ。その理由をひもといていく。

インフレ抑制のためにFRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めを急ぐ。利上げ、株安、中国経済減速、ドル高、原油高という現下の状況は2018年と酷似する。その共通点が示唆する今後の経済、市場の先行きを解説する。

3%を超えていた米国の長期金利の指標である10年国債利回りはピークアウトした。それと歩調を合わせるように米国株も下落し始めた。インフレも峠を越す兆候が見える。株と長期金利の同時低下の背景を解説する。

1ドル=129円台にまで一時上昇したドル円レート。ドル以外の通貨に対しても円は下落しており、独歩安の様相を呈しているが、日本銀行は金融緩和継続の姿勢を崩していない。たとえ、日銀が利上げしても現在の円安を止めることは難しいだろう。

FRBは高進するインフレを抑制するために利上げペースを加速しそうだ。急速な金利上昇による景気減速が懸念されるが、現在のところ株式をはじめとする市場は楽観視している。本当に、景気減速を懸念しなくていいのか。経済情勢を基に検証する。

ロシアのウクライナ侵攻で原油価格上昇が加速した。一方、これまで原油価格と歩調を合わせて上昇していた米国の長期金利の指標である10年物国債利回りが低下し始めた。その理由を検証する。

ユーロ圏の1月の消費者物価上昇率は市場予想を上回ったことで、注目された2月3日のECB(欧州中央銀行)の政策理事会。ラガルド総裁は22年内の利上げを否定しなかった。過去の原油高局面でのECBの利上げはその後の経済にマイナスに作用した。今回も米英のように労働市場の逼迫が起きていない状況で利上げを急げば、欧州・世界経済に悪影響を及ぼしかねない。

FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ=ドル高円安と考え、2022年のドル高円安予想の要因として、利上げを挙げる市場参加者は少なくない。しかし、過去を振り返れば利上げ局面は必ずしもドル高円安局面ではない。最近の資金フローなどを見る限り、着目すべきポイントは他にある。

オミクロン株の拡大懸念、米国の早期利上げによる景気減速懸念などから足元はドル安円高が進んでいる。しかし、2022年以降を見渡せば、円安が進む公算が大きい。その円安は日本経済にとって悪い円安であり、日本銀行が金融を引き締めても止めることはできなさそうだ。

米国の10月の消費者物価上昇率が6%を超えるなど、米国ではインフレ圧力が高まっている。年初には2024年以降とされていたFRB(米連邦準備制度理事会)の利上げは22年に前倒しになりそうだ。しかし、長期金利は大きく上昇していない。その理由は2つある。

FRB(米連邦準備制度理事会)が年内にテーパリング(量的緩和縮小)を開始、23年にも利上げするというのが市場の既定路線になりつつある。米国の社債市場、欧州の国債市場など各市場はその路線を織り込み、冷静に推移している。しかし、22年のフランスの大統領選挙、イタリアの総選挙次第では、市場に波乱が起きる可能性がある。

米国の物価は年初からの国際商品市況の高騰によって、一時的に押し上げられている面が小さくない。その影響は2022年初めには、そこに、テーパリング(量的緩和の縮小)開始が重なりそうだ。テーパリングによる買い入れ額減少の影響が大きい物価連動国債の利回り(実質金利)が過度に上昇するリスクがある。その場合、商品市況下落、ドル高、株価下落といった市場の混乱が起きかねないことに注意が必要である。

FRB(米連邦準備制度理事会)は、「平均インフレ率目標」の施策を転換し、年内にも量的緩和縮小を開始しそうだ。ドルの実質金利上昇期待でドルは高くなり、資源など商品価格は下落基調にある。当面、この流れは変わりそうにない。

通常であれば実質金利低下は一時的な長期金利低下をもたらすが、最終的にインフレ率上昇を通じて金利上昇要因となる、しかし、FRB(米連邦準備制度理事会)がインフレ率の目標上振れ容認姿勢を転換したことで、早期の金融引き締めでインフレが抑制されるとの予測につながり、実質金利低下が金利上昇をもたらさない可能性が高まっている。

6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で2023年への利上げ前倒しを示唆したFRB(米連邦準備制度理事会)。目標である2%を超えるインフレ率を容認する姿勢を改めたようだ。通常、利上げ示唆で上昇することが多い長期金利は今回、低下した。それは、長期でのインフレ抑制を市場が織り込んだからである。

FRB(米連邦準備制度理事会)は、量的緩和の縮小は慎重に進める方針を示唆している。雇用者数の伸び鈍化もあり、米国の10年国債利回り上昇は一服し、実質金利は低下した。ドル安観測が強まるなか、ドルが売られる相手として人民元が浮上している。中国が金融緩和を進めにくい状況下、しばらくは人民元高が続くだろう。

日本のワクチン接種率はG7の中で最低である。接種の遅れは感染の収束を遅らせるだけでなく、金融市場にも影を落とす。米国の長期金利がピークをつけたにもかかわらず、円はドルに対して安くなっている。株価を見ても、米国株が上昇基調を続けている一方、日本株は停滞気味だ。この雰囲気を変えるのは、ワクチン接種の早期の進展しかない。

年初以降、数次にわたり株式市場の下落要因となってきた米国の長期金利(10年国債利回り)上昇。要因別に分析していくと、今後さらに上昇するかの鍵を握るのは、5年国債の利回りであり、利上げの動向である。当面、上昇させるだけの材料は見当たらず、長期金利のピークアウトは近い。

昨年は4月以降、一度も1%を上回らなかった米国10年債利回りは年明け早々に1%を上回った。そこからの上昇ペースは相当に速いものとなり、ついに1.6%を上抜けてしまった。

長短金利は、金融政策や債券需給の影響を受ける実質金利の部分とインフレ期待の2層に分けることができる。
