ニューズピックスで考える、市場の軸のずらし方
ムーギー:高宮さんはベンチャーキャピタリストのお仕事で、数多くのベンチャーをご覧になっていると思います。それらの企業でよく見られる、市場創造のパターンなどはありますか。
高宮:ブルー・オーシャンと絡めると、3つパターンがあると思っていて。まず、まっさらな更地に、市場そのものを創っていくパターンの中にも2つパターンがあると思います。
ムーギー:市場がないから、そもそも競争もない。先ほどの更地パターンですね。
高宮:そうです。更地のパターンの1つ目は、新規技術など完全にゼロからユーザーや市場創りから始めなければならないケースです。投資はけっこうかかります。けれど、無事に市場を立ち上げられた際には、ほぼ自社独占みたいになれるのが強いですよね。
2つ目は、リアルな世界の習慣、前の時代の習慣を、現代のものに置き換えるパターンです。例えば、ガラケーやPCといったデバイスで提供されていたサービスを、スマートフォンなど最新のデバイスに置き換えるような領域ですね。すなわち根本的なユーザーのウォンツは顕在化されているけれど、環境が変わって、それを満たす方法が存在していない領域ともいる。
3つ目は、そもそも市場がしっかりとある中で、市場を再定義して、新たにつくっていくものです。
ムーギー:例えば、ニューズピックスみたいなサービスは、2つ目に当てはまりますか。モバイルへの最適化が進んでいますよね。
高宮:2つ目というよりも、3つ目に近いかもしれないですよね。競争の軸をいろいろずらしていると思うので。
ニューズピックスの大きな特徴は、ニュースを読むだけでなく、そのニュースに対する一般ユーザーのコメントを読んだり、自身もコメントを書いたり出来るところですよね。メディアという市場の中で、記事の価値を高めることに競合は終始していたところ、コメントの方に価値軸をずらしたことが、まさにブルー・オーシャン戦略です。
ニュースにコメントできるというコミュニティ要素は、けっこう大きいと思っていて。既存のメディアでは情報が一方通行だけれども、ニューズピックスは緩いけれどインタラクティブなやり取りがなされていますよね。
ムーギー:いまやあらゆるメディアがコミュニティ要素を加えようとしていますが、このコミニュティマネジメント能力や戦略が、メディアの価値を左右する時代かもしれませんね。
高宮:そう。コミュニティといっても、実はなかなか新陳代謝の概念が難しい。エンゲージメントの高い、古参兵みたいな人ばっかり重要視しすぎると、2ちゃんねるのVIPみたいになっちゃう。同じ人たちが決められたフォーマットの中で、超ハイコンテクストにやり取りをして、熱量はめちゃくちゃ高いけれど、広がりが出ないし、新しいコンテンツのフォーマットも生まれてこない…という状態に陥ってしまいます。
一方で古参兵みたいな人たちを冷遇しすぎると、エンゲージメントが高い人がどんどんいなくなってしまう。そこの正しいバランスみたいなのがあるんですよね。
ムーギー:確かに。
高宮:生産的に新しいコメントの書き方とかを開拓してってくれるような人は残ってほしいでしょうし、どんどん新しいコメントのフォーマットを出して、他の人にも真似をしてほしいみたいな思もあるはずですよね。
新旧のバランスは、2チャンネルも、ニコニコ動画もそうですが、コミュニティ型のビジネス全て共通する、コントロールが難しい部分ですよね。