RIZAPが捨てた要素は何か?
――高級な施設で、結果が出ないジムなど要らない
ムーギー:ブルー・オーシャン戦略では、多くの企業が同じような軸で戦っているのに対して、本当は顧客が気にしていない部分をバッサリと切り、反対に顧客は気にしているけれども、他が提供してないものを提供して、戦略にメリハリを付け、違う市場を創造する重要性を説いています。
御社の場合、新たに付け加えられたのが、伴走して、サポートしてくれる仕組みだと思います。反対に取り除いた要素はありますか。
瀬戸:そうですね、我々も優先順位をいつも考えていました。例えば、高級路線のスポーツジムなども、ビジネスを開始する前に体験してみたんです。設備も豪華で、お酒などのドリンクも飲めたりして。けれども、思っていたよりもお客様が入っていなかった。
究極の選択なのですが、「何でもそろっている非常にきれいな施設で、パーソナルトレーニングを提供している。けれども、結果は一切出ない」。反対に、「ボロボロの施設で、とにかく飲み物、ウェアなど、全部持参する必要がある。けれども必ず結果は出る」。お客さまに「どっちを選ぶ?」と聞くと、絶対、後者だと思うんです。
もちろんきれいで洗練された施設の方がいいに決まっています。けれども、我々が提供すべきものの本質、我々が何を優先していくのかを、サービス開始前に議論しました。結果として、設備などのハード面は優先事項ではないと考えましたね。
ムーギー:他社が施設の充実度で競争していたりすると、何でその部分で争っているのだろう?と感じてしまうんですね。
瀬戸:そうです。我々は運動する場所を貸し出しているわけではない。結果が出るまでサポートすることを提供しているので。
ムーギー:スポーツジムという、ハード面の場所貸し産業になっているところに、サポートというソフト面を提供して、市場を創っているんですね。
瀬戸:ハード面の差別化は、すぐに真似が出来てしまいます。新しいマシーンなどは、購入すればよいだけです。
けれども、人が生み出すものは、品質の一定化が非常に難しい。だからこそ、そこに注力すれば、他社と大きく差別化出来るんです。我々の場合はその部分がトレーナーに当たります。その質を高い次元でコントロールしているのが、競争力になっていると思います。
我々と同規模のパーソナルトレーニングチェーンが出てきていないのも、このソフト面が理由として大きいのではないでしょうか。