NHK「クローズアップ現代」でも特集が組まれ、ますます話題の「ライフログ」。デジタルツールの普及によって、気軽に“人生の記録”ができるようになった今、いかに記録を活用するかが大きな課題となっている。果たして、実践者は記録からどのような発見を手にしているのだろうか? 番組に出演した『人生は1冊のノートにまとめなさい』の奥野宣之氏と、『たった一度の人生を記録しなさい』の五藤隆介氏が、ライフログの悩みの種である「何をどう記録するか」「どう役立てるか」「どう見返すか」の3点について、自身の経験をベースに本当に役立つ方法を語った対談連載。第2回は「記録をどう役立てるか」について。
この記事は奥野氏の新刊書籍の出版を記念して再掲載しています。
『情報は1冊のノートにまとめなさい[完全版]』奥野宣之・著
本体1400円+税/ダイヤモンド社
海外旅行で役立った写真
ログを頼りに無事生還
奥野:第1回で、ライフログは何でもかんでも記録するのではなくて、「自分」というフィルターを通すことが大切だという話をしました。やはり記録したことを「活用」するという前提でログを取っていかないと、ただの記録魔で終わってしまいますよね。
その上でも、「記録の効果」について知っておくことが重要です。ライフログに挫折してしまう人は、その効果を実感していないからだと思いますが、五藤さんは記録を通して役立ったことはありますか?
五藤:海外に行ったときの話ですが、このときにちょっと面白いエピソードがあったんです。それぞれ住んでいる場所が離れているので、現地集合・現地解散で、飛行機で香港まで飛んで、香港からフェリーに乗ってマカオに行って、マカオで2泊してという行程でした。
マカオのことは友達が詳しく知っているからと、行きの飛行機からビールをガンガン飲んで、全部お任せだったんです。そこで、何をどう間違ったのか、自分一人だけ帰りの日付を間違えていて、1日あとに帰ることになっちゃって……。それに気がついたのも現地についてからというバカな話で(笑)。
で、いざ帰ろうと思ったら、帰り方がまったくわからない(笑)。英語が通じるだろうと甘く見ていたら、町の人たちは北京語しかわからないんですよ。お金があればタクシーで移動することもできたんですが、帰りだったので現地のお金もほとんど残っていなくて。だから電車かバスで行くしかなかったのですが、バス停へ行ったら、どのバスに乗ればいいのかもまったくわからない。町の人に聞いても、「はあ?」という感じで冷たいんですよ(笑)。
どうやって帰ろうかと困っていたら、旅行ということもあって、とにかくそこら中の景色の写真を撮りまくっていたことを思い出したんです。いつもならこういうのはネットで調べるのですが、このときは必死に過去の写真を探しまくったんです。行きのチケットはどこかに行ってしまったのですが、iPhoneで撮影したものがちゃんと残っていて、周りの人に必死にiPhoneを見せながら、「これ、この場所に行きたい!」という感じで伝えることができて、何とか無事に帰ることができました。
奥野:英語が通じないと、文字を書いても通じないですしね。ちなみに、どういう写真を残していたんですか?
五藤:例えば、行きにバス乗り場で待ちぼうけしていたときの写真とか、買い物をしたときのレシートですね。
奥野:海外に行くのに全然調べていないというのは逆にすごいですけど、日常的にログを残していたことで助かったケースですね(笑)。身近なところでも、飲み屋に忘れ物をして、「あの飲み屋、人に教えてもらったところだからわからない」というときに、レシートとかショップカードが残っていて、「助かった」っていうのはアナログのノートでもよくあります。
五藤:財布を落としたときにも、財布に入っているカードを記録していたり、foursquareでチェックインしていたおかげで、すぐにお店に電話したり、持っているクレジットカードを止める手続きをしたりっていうのがスムーズにできた、なんていうこともありました。
奥野:けっこう保険的な意味合いは大きいですね。ログは趣味かつ保険ですね。1年に1回であれ、やっぱりやっていてよかったなと思うんですよ。絶望からは一気に救われるわけだから。