デジタル化の時代を迎え、刷新すべき日本のレガシーシステムの代表に電力インフラがある。経団連の中西宏明会長に、インタビュー(上)に続いて、電力システム改革について聞いた。中西氏は6月1日にリンパ腫と診断され、現在、療養中。インタビューは5月8日に実施した。(聞き手/ダイヤモンド編集部 千本木啓文)
――4月に電力エネルギー問題について提言を発表されました。なぜいま提言をされたのでしょうか。どんな危機感がありますか。
エネルギーに関しては、私自身3、4年前の経団連副会長の時代からすごく危機感を持って発言してきました。
前任の会長の榊原定征さんと相談して、エネルギーの懇談会をつくり、組織として議論してきました。
会長になったのを機に、具体的にどうするかを集中討議して提言まで持っていったのがこの発表のタイミングだっただけです。私としては、なぜいまかというより、4年前からやっていたことの結果なのです。
単にテクノロジーが変わるとか再生可能エネルギーが普及するとかいう以上に、日本の電力の産業構造が必然的に変わっていく。その変貌が大変危険な方向に行っているという感覚を持ってきました。
福島第一原子力発電所の事故があって、3~4年は(エネルギー政策が停滞しても仕方がない)猶予期間があった。あれだけの大災害だったのでそれは当然です。
でも、それが過ぎた後の、(エネルギーを化石燃料に依存する日本への)世界からの厳しい視線、それから、日本のエネルギー問題のあまりに偏った議論の在り方に危機感を覚えました。
だから、提言をまとめた。内容を聞くと、「それはそうだ」と言ってくれる人は多いです。
――提言では、原発の是非だけでなく、古くなった送配電網の再整備などを包括的に考えることが重要だとしています。しかし、それを実現するのは容易ではありません。
日本の電力システムは、高度成長を支えてきたのですから、世界でも類を見ない成功例だったのです。
しかし、電力システム改革の根底には3つの課題があります。
一つは、システムが成功例とはいえなくなったので改革をやろうじゃないかという話。二つ目が福島の事故を受けた議論。三つ目が再エネ拡大に向けた大きな流れです。
これらが組み合わさった問題なので、こうすればぱっとうまくいくというふうにはなりません。ある一部を解決しようとしてぐっと押すと、反対側から飛び出してきたりする。問題が複雑だからこそ危機なのです。