売上高1.2兆円、社員数約9400人、設立80年以上の歴史を誇る日本有数の不動産デベロッパー、三菱地所グループ。日本経済の中枢、大丸有(大手町、丸の内、有楽町)エリアに多数のビルを所有しており、その含み益は3.9兆円に達する。そんな日本の中枢の“大家”が守り続ける伝統と、押し寄せる世界経済の変化の中で求められる改革の方向性について、吉田淳一社長に聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 大根田康介)
ビジネスモデル革新に1000億円
――2017年4月に社長就任後、中期経営計画(18年3月期~20年3月期)の策定などに携わってこられました。社内の経営方針を決める中でどんな改革を意識してこられましたか。
まず当社の経営で大前提としてあるのは、不動産が何物にも代え難い「唯一無二の資産」だということです。
当社の歴史は80年以上ですが、これまでは主な事業エリアである大丸有(東京・大手町、丸の内、有楽町)で培ってきた伝統を守る方にウエートが置かれていたと思います。日本の東京という街がこれからも世界で評価されていくためには、唯一無二の資産はしっかり引き継がなければなりません。
しかし一方で、世界情勢が刻々と変化する中で、日本の不動産業界を取り巻く環境も大きく変わっています。そんな中で、今後はいかに先進的なことにチャレンジしていくのか、三菱地所グループ全体が常に意識してそれにどう取り組むのか。そちらのウエートをより高めていけるかどうかが大事です。
私が社会人になった40年前くらいは、欧米の模倣が先端だという意識でした。今は、日本が世界としっかり向き合うには、日本の歴史や伝統などの良さをきっちり理解し、コミュニケーションの中でその良さを伝えていくことが求められています。
当社の過去の伝統に縛られず、常に新しいものにチャレンジしていく意識を社員にも持ってほしいと考えましたから、新しい中期経営計画では「ビジネスモデルの革新」を掲げ、新しい事業を生み出すために3年間で1000億円という予算を設けました。