みずほ証券社長が「ただ事ではない」と語る構造不況に挑むための秘策Photo by Takeshi Shigeishi

顧客の高齢化や低金利環境など構造不況に苦しむ証券業界。インターネット証券の攻勢にさらされ、高コストの対面証券は業績悪化に苦しんでいる。3メガ銀行系証券会社の一角を占めるみずほ証券も強い危機感を抱き、飯田浩一社長は「既成概念にとらわれていたり、壁の中に閉じこもっていたりしては駄目」と説く。生き残りの戦略は、銀行や信託銀行などグループの連携強化と、証券業の壁を越えたビジネスの創出にある。(聞き手/ダイヤモンド編集部 重石岳史)

――証券業界の近年の変化をどのように見ていますか。

 まず足元の証券ビジネスはすごく厳しいです。

 業界のここ30年の推移を見ると、1990年代のバブル崩壊、2000年代前半のITバブル崩壊、10年前後のリーマンショックと、外部環境が急激に悪化したタイミングで証券会社の経常利益合計が5000億円を下回っている。

 今はアベノミクスで株価は良いはずなのに収益が上向かない。それどころか5000億円を下回ってしまっている。こんなことは過去30年で初めてであり、ただ事ではない。

 その根底には、少子高齢化やテクノロジーの発展、低金利の長期化がある。証券ビジネスは社会や経済の変化と密接につながっている。デフレの慢性化で企業は設備投資を控え、個人の貯蓄から運用へという流れがなかなか起きない。これらが証券会社の収益性低下の原因となっている。

――そういう厳しい状況下で社長として何を変えようとしているのですか。

 みずほフィナンシャルグループ(FG)にいた当時から、「このままではまずい」という問題意識があり、みずほ証券社長に就任した18年から、まさに構造改革に取り組んでいる。みずほが“イケていない” ところを500個くらいリストアップし、改革プランをまとめました。

 証券会社に来て社員と面談する中で改めて感じたのは、同じ金融でも銀行と証券会社は全く違うということ。銀行は貸し出しを積み上げるとか、支店を減らすとか、私の中では直線型のイメージですが、証券会社は右から左へつなげる仲介ビジネス。つなぐための懸け橋になれているか、どれほどの掛け算をつくれているか、ということだと思う。

 だから従来の既成概念にとらわれていたり、壁の中に閉じこもっていたりしては駄目なんです。会社やグループの外へ、あるいは証券というビジネスの外へ、壁を越えて挑戦しなければならない。社内の空気を変えることが私の大きなテーマです。

 そうはいっても、こういう状況だから守りも固めなければいけない。攻めるための守りという意味で、コスト削減やビジネスモデルの転換を進めています。