広島市は“コロナ以前”は主に欧米系の観光客でにぎわっていた。加えて、中国地方の“首都”としての経済状況は悪くはなかった。とはいえ、天満屋広島アルパーク店が今年1月末に閉店。そごう広島店はまだ気を吐いているものの、JR広島駅前の再開発が進み、大型商業施設がオープン予定だ。強力なライバルの登場で、残った百貨店はより厳しい環境にさらされることになる。

 また三越は、松山でも3期連続赤字となっており、旧伊勢丹と合併前の旧三越時代に“全国チェーン”化を目指した影響を今なお引きずっている。コロナにより経営状態が悪化すれば、より急速な構造改革が必要になる。

 地方ではすでに百貨店の倒産が話題を集めた。山形県の老舗、大沼である。

 1月27日に山形地方裁判所に自己破産を申請し、創業320年の歴史に幕を閉じた大沼。これで山形県は全国で初めて、百貨店が存在しない県となった。

 大沼を巡っては、2018年にファンドが創業家から経営権を取得したが、19年に従業員が経営権を奪取するなど、混乱が続いていた。売り上げ不振は長年の課題で、友田信男・東京商工リサーチ常務取締役は「キャッシュレス決裁の導入も資金繰りを悪化させた要因の一つ」と指摘する。

キャッシュレスも資金繰り悪化の一因
売上金入金遅れ響く

 クレジットカード決済の場合、売上金の入金は1~2カ月後。また決済手数料は売り上げが大きいほど負担も大きい。資本の分厚い大手ならいいが、すでに資金繰りが厳しかった大沼にとっては、これも重圧となっていたというのだ。

 経済同友会の櫻田謙悟代表幹事は3月17日、コロナの感染拡大を受けた経済対策としてキャッシュレス決済へのポイント還元の期限を今年6月末以降に延長するよう求めた。消費喚起策としては有効かもしれないが、資金繰りに厳しい中小企業にとってはリスクとなりかねない。

 終わりの見えないコロナ危機。その影響は間違いなく、構造不況業種の代表格である地方の百貨店に及んでいる。