儲かる農業 攻める企業#3
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国内のコメの消費額は過去30年で半減した。だが、新たな品種や販売方法などで市場を拡大しようとする企業の動きが活発化している。特集『儲かる農業 攻める企業』(全17回)の#3は、衰退市場を成長市場に変える、パナソニックや豊田通商、三井化学アグロなどの試みをレポートする。(ダイヤモンド編集部 千本木啓文)

脱コシヒカリ、コメの多様化を
ハイテク炊飯器が後押し

 今年2月、ある数字が明らかになると農業関係者に激震が走った。この10年で「2人以上世帯のコメの年間支出額」(総務省「家計調査」)が24%も激減したことが分かったのだ。4分の1の需要が消えるとは激減どころか“爆減”レベルの落ち込みだ。直近の2019年でも同支出額はわずか2万3212円(前年比4.5%減)であり、下げ止まっていない。

 国内の市場規模の落ち込みはそれどころではない。日本のコメ産出額から推計したコメの国内市場規模は、平成の30年間で、3.2兆円から1.7兆円へと、何と半減してしまっているのだ。

 これらの数字は、農水省やJAグループが膨大な予算を投じて行ってきたコメ消費拡大の施策が失敗に終わったことを物語っている。

 小学生がバケツでコメを作る「バケツ稲」、小麦の代替を狙った「米粉」、世界的プロテニス選手ジョコビッチ氏の「グルテンフリー(小麦抜き)健康法」の普及――いずれも、日本人のコメ離れを食い止めることはできなかった。

 コメの流通関係者は「5年も前の古米が出回っていた頃に比べれば、今はコメの品質も味も格段にアップしたのに……」と嘆く。

 もっとも、消費減退の理由は明白だ。政府が多額の補助金を使って、人が食べるコメから、家畜のエサである飼料用米に生産を誘導し、米価をつり上げているからだ。

 消費者がそっぽを向く理由の一つに、生産コストの低減が売価に反映されることなく、必要以上に“割高なコメ”を食べさせられている実態があることは確かである。

 そんな衰退市場において、コメ消費復活に挑む救世主が現れた。国内家電首位を誇り、60年以上の長きにわたって炊飯器を作り続けてきたパナソニックである。