――仕事や人生に対する姿勢、考え方をアップデートできたという人が本当に多いですよね。

末永 そのほか、ある広告代理店で働く若い社員の方からもメールをいただいたのですが、その方は仕事の仕方について「クライアントから求められる“花”“アウトプット”の部分」ばかりを作っている自分に気づき、また上司からも「クライアントから求められる花を作るのが仕事なんだよ」ということを言われて、「いまの仕事にちょっと意味を見出せなくなってしまった」。そんなことを語ってくれていたんです。

 でも『13歳からのアート思考』を読んで、同じ仕事であっても「自分がやりたかった興味」とか、「探究の根を伸ばす」という部分ができるんじゃないかと考えるようになった、という感想を送ってくださいました。

仕事がつまらない人に共通する「うまい絵を描かなきゃいけない」という呪縛

 これは私としてもものすごくうれしいことで、私が授業で行ったり、この本で書いていることっていうのは、決して美術に携わる人だけに必要なものではなく、いろんな人の人生とか、さまざまな職種、仕事の文脈のなかで置き換えても、とても大事なことなのかな、と思っています。

 社会に出て働いてみると、やっぱり「この環境で、うまくやっていかなきゃいけない」という思いがあるので、さまざまな葛藤のなかで、自分自身の「興味のタネ」とか「探究の根」を伸ばすことがなくなってしまう。そういった部分にフタをしてしまうこともきっと多いですよね。

 でも、そういうときこそ「アートという植物」の全体像を思い出してもらえたら、と思っています。

【大好評連載】
第1回 なぜ中高生向けの「美術」の授業で、「自分なりの答えを見つける力」が育つのか?
第2回 仕事がつまらない人に共通する「うまい絵を描かなきゃいけない」という呪縛
第3回 コロナ時代に「真面目で優秀な人」が体験すること
第4回 もう“みんなの意見”に流されない。「自分なりの視点」がある人になる3つの方法

仕事がつまらない人に共通する「うまい絵を描かなきゃいけない」という呪縛