保険ラボ

生命保険業界で今、医療保険の約款解釈を巡って混乱がじわりと広がっている。同じような条項でありながら、保険金の支払い漏れがあったとする生保と、支払い漏れは一切ないとする生保があり、解釈の違いによって対応が大きく分かれてしまっているのだ。混乱の舞台裏を探った。(ダイヤモンド編集部 中村正毅)

波紋を広げた富国生命の「支払い漏れ」

 きっかけは、富国生命保険が6月下旬に公表した1通のお知らせだった。

富国生命富国生命としては「支払い漏れ」という位置付けだった Photo by Masaki Nakamura
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 その内容は「特約に定める入院初期給付金のお支払いが、できていなかった事象が判明しました。(中略)かかる事態を招き、お客様には多大なるご迷惑とご心配をおかけすることとなり、深くおわび申し上げます」というものだ。

 さらに「保険金等支払管理態勢の一層の強化を図り、再発防止に努めてまいります」と結んでおり、あたかも事務の不備によって、支払い漏れが発生したことに対する謝罪文になっている。

 ちなみに、追加支払いとなる件数は3102件、金額ベースでは合計1億7500万円になるという。

 これだけならば、事務ミスについて謝罪し、さかのぼって追加支払いをするというだけの話だが、事はそう単純ではない。実は、富国と類似の約款条項がある生保の間で、解釈が割れているのだ。