没落貴族#1Photo by Tomomi Matsuno

アパレル企業で今年の春夏商品の在庫が膨れ上がっている。コロナによって在庫回転日数が長期化したアパレル企業はどこか。秋冬物の発注にブレーキをかけた企業はどこか。特集『没落貴族 アパレル・百貨店』(全9回)の#1では、決算数値から23社の財務状況をランキングし、崖っぷちに追い込まれた企業を探る。(ダイヤモンド編集部 相馬留美)

緊急事態宣言下の営業自粛で
春夏物の在庫が山積みに

「コロナは“原因”ではなく“きっかけ”なんです。『作り過ぎ』『セールし過ぎ』という、業界が抱えていた問題があぶり出されただけ。もっと早く動けばよかったと思うことは、確かにありますね」

 アパレル大手TSIホールディングスの上田谷真一社長は、コロナ禍のアパレル業界について、自戒を込めてそう語る。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、都市部の百貨店やファッションビル、そして路面店は、2月から5月にかけて営業時間の短縮や休業を余儀なくされた。そのため売り場をなくした多くのアパレル企業は、本来売るはずだった2020年春夏シーズン物の在庫を大量に抱え込む羽目になった。

 また、2月から5月という時期も悪かった。ちょうど春夏シーズンの新製品が定価で売れる3月から5月を逃すこととなり、緊急事態宣言が解除された6月以降はセール期だ。加えて、8月は一年で一番服が売れない時期である。

 もちろん、在庫の一部はECで販売できたとはいえ、売り上げ減をカバーするには至らなかった。

 緊急事態宣言が解除されても、通常の売り上げには戻らない。在庫の山は積み上がり、キャッシュが目減りしていく。資金繰りが厳しくなったアパレル企業が手を付けるのは、仕入れの抑制だ。ただ、仕入れ減は将来の売り上げ減に直結するもろ刃の剣でもある。

 コロナ禍によって在庫が増えたアパレル企業はどこか。秋冬物の発注にブレーキをかけた企業はどこか。

 ダイヤモンド編集部は在庫管理クラウドサービスを運営するフルカイテンと協力し、アパレルの上場企業23社の直近の決算を基に、在庫の効率性を示す「在庫回転日数」と、仕入れの増減を示す「発注増減率」を算出し、ランキングした。なお、在庫回転日数は売上原価および棚卸資産等の数値を使用した。