ほんのちょっとしたことが、後々大きな差異を生む
世にある多くのビジネスに関する論文や書籍には、ユニークな着眼点やアイデアで面白いものがたくさんあります。ただしそれらの書き手の中には、切り口のユニークさで学会での評価を狙ったものや、「どこそこの企業での成功事例です」とコンサルティングや経営・ITツールの受注につなげたい人も大勢います。
結果、本当に今の自社が抱える問題に対する処方箋になっているか、単なるアイデアではなく本当に実践で使えるレベルにまで練られているのかといえば、疑問を感じざるを得ません。
仕事柄、成功した経営者の書籍は、経営理論の書籍より好んで読んでいます。しかし、偉業の裏にあるいちばん知りたい実態部分は、オブラートにくるまれている場合がほとんどです。
また、今回のコロナ禍によって、リモートワークによる効率化、アウトプットが重視されるビジネス環境やマネジャーの価値とは何か、変化した市場を追いかけてその実態を知る難しさなど、「新しい現実の課題」を否応なしに突き付けられました。
成功した経営者の多くが常々言うように、この大きな変化は「ピンチはチャンス」にできます。
私は、これまでに『戦略参謀』『経営参謀』『戦略参謀の仕事』の3冊を出版してきましたが、今回、初めて経営トップに向けて本を書きました。私が戦略参謀として数多くの改革現場で直面してきた事例から、経営トップが知らない現場で何が起きているのか、どのようなプロセスでそんな事態に陥ったのか、何をすればいいのかについて解説しています。
今、やっていないちょっとしたことが後々大きな差異を生むこと。今、手を打ってもらえれば先々の展開が大きく変わることを知るための「気付き」になれば、との想いで執筆しました。
因果に気が付けさえすれば、その「根」に対する打ち手は、案外シンプルなことが多いものです。改めて、今の「当たり前」の正否を見直す視点として、本連載では本の中から抜粋していきます。
改革現場で仕事をしていてつくづく感じるのは、経営は複雑なものではなく、実はシンプルなものだということです。
しかしながら、部分最適のための様々な理論や手法に惑わされると、複雑怪奇な世界にハマってしまいます。この連載が、経営を常に王道の視点からシンプルに捉える一助になれば幸いです。
また、現場のビジネスパーソンの方々にとっては、会社で起きている不可解なことや、納得できないことの奥にはどんなメカニズムが働いているのか、会社が良くなるためには、どんなことが必要なのかがわかるはずです。ぜひ、最後までお付き合いください。