Cox比例ハザードモデルにて、死亡リスクに影響を及ぼす可能性のある交絡因子(年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、高血圧・糖尿病の既往、教育歴、雇用形態、精神的ストレス、野菜・魚・果物・大豆の摂取量)を調整後、緑茶またはコーヒーの摂取量と全死亡リスクの関連を解析した。なお、交絡因子として、緑茶摂取量との関連の解析にはコーヒー摂取量を、コーヒー摂取量との関連の解析には緑茶摂取量を加えた。
その結果、緑茶の摂取量は、脳卒中または心筋梗塞の既往者の死亡率と逆相関することが明らかになった。具体的には、脳卒中既往者では緑茶を飲まない群に比較し、1日に3~4杯飲む群の全死亡ハザード比(HR)は0.56(95%信頼区間0.34~0.92)、5~6杯飲む群はHR0.52(同0.31~0.86)、7杯以上飲む群はHR0.38(同0.20~0.71)だった(傾向性P=0.002)。心筋梗塞既往者も、1日に7杯以上飲む群はHR0.47(同0.30~0.72)であり、摂取量との逆相関が認められた(傾向性P=0.01)。ただし、脳卒中や心筋梗塞の既往のない人では、緑茶摂取量と全死亡リスクに有意な関連は認められなかった。
これに対してコーヒーの摂取量は、脳卒中または心筋梗塞の既往のない人の死亡率と逆相関していた。具体的には、コーヒーを飲まない群に比較し、週に1~6杯飲む群はHR0.86(同0.82~0.91)、1日に1杯飲む群はHR0.86(同0.80~0.92)、2杯以上飲む群はHR0.82(同0.77~0.89)だった(傾向性P<0.001)。また、心筋梗塞既往者も1日に2杯以上飲む人はHR0.61(同0.41~0.90)であり、摂取量との逆相関が認められた(傾向性P=0.03)。ただし、脳卒中既往者では、コーヒー摂取量と全死亡リスクに有意な関連は認められなかった。
この研究には関与していない、米National Jewish HealthのAndrew Freeman氏は、「緑茶やコーヒーに含まれるフラボノイドは、心血管系の健康に良いというエビデンスが存在する。ただし、今回発表された研究結果が、緑茶やコーヒーが延命のための妙薬であることを証明するものではない。例えば1日に7杯の緑茶を飲む人たちは、時間に余裕がある生活の人が多いかもしれず、それが死亡リスク低下と関係している可能性もある」と語る。そして、「緑茶やコーヒーが、ベーコンチーズバーガーの悪影響を打ち消すことはできない」とし、果物、野菜、豆類、全粒穀物などの植物性食品が豊富で、加工食品を少なめにして、総合的な食生活の質を高めることが重要であると指摘している。
とは言うものの、「甘い飲み物を緑茶やコーヒーに切り替えることで恩恵を受けられるだろう。もちろん、それらにクリームや砂糖を加えなければの話だが」と追加している。ただし、「カフェイン摂取量が過剰にならないようにする注意も必要だ」とのことだ。
米ノースウェスタン大学の教授で米国心臓協会(AHA)に専門医として所属するLinda Van Horn氏は、「日本人を対象に行われた研究結果が、食習慣の異なる国にも当てはまるのかは不明だが、緑茶にはエピガロカテキンガレートと呼ばれる抗炎症作用のある成分が含まれており、心血管代謝領域でもその作用への認識が高まっている」と解説。また、Freeman氏と同様に、「甘い飲み物を緑茶に置き換えることは賢明な選択だ」と語っている。(HealthDay News 2021年2月4日)
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