自社の核となっている強み、
競合優位性を理解していない企業は多い

 競争力のある製品を扱っている、ある中堅の化粧品メーカーは、新しい販社制度に変えてから売上が大きく伸び始めました。

 調べてみるとこの制度では、同業他社に比べて販社側に卸す仕切り価格が低く、販売組織側が手にすることのできる利益の幅が大きくなる設定になっていたため、販社が自ら販売員を開拓して売上を上げるインセンティブが強く働く構造になっていました。

 ところがこの会社はこの優位性に気が付かずに、さらなる成長のためにと、ECを使った新たな販売チャネルの開拓や直営店舗の開設など、既存の販社にとっては脅威となるプランの検討を始め、販社との信頼関係を崩す事態が起きていました。

 この事例のように、自社の核となっている強み、つまり、対競合優位性を自覚できていない企業は意外に多いものです。

 中には自社の持つ強みを、どこかで聞きかじってきた「ガラガラポン」の美名のもとに、平然と壊していくワンマントップを見かけることもあります。せっかくの自社の強みを理解することなく、あるいは、新しい分野での成功に必須となる強みを課題としてイメージすることなしに乗り出していくと、その後が大変です。

 また、強みを活かすつもりで始めても、予期していなかった新たな問題、課題は必ず現れます。対応すべき課題の難易度や量が、自社、あるいはトップの経験から培われた能力やキャパシティの限度を超えてしまうことにもなりかねません。