歴史を知れば、いまの社会問題の見方も変わる

―― 外交の歴史を学ぶ一方で、昔も今も変わらない日本の古さも痛感しました。たとえば平塚らいてうは、強制的に夫婦が同じ姓になることに反対して事実婚を選び子育てした女性です。でもいまだに夫婦別姓が認められていない日本って、100年経っても変わってないんだなと。

本郷 日本は家が強いんです。人よりも家なんですよ。政府は、家制度がぶっ壊れちゃうのをマズいと思ってる。家制度が崩壊するとお金がかかるから、家族に介護を押し付けたいんです。だって介護をすべて税金でまかなったら、どんどん高齢化が進んで追いつかないじゃないですか。だから政府は、家制度をなんとしてでも維持して、家族でなんとかしてほしいわけです。

 ジェンダーの問題にしても、世界の中で日本は圧倒的に遅れてるとか、女性の地位が低いとか、そういう問題が取り沙汰されています。でも、時代をさかのぼってみると、違う気づきがあるんですよね。江戸時代後半から明治にかけて、女性は特にひどい扱い方をされていたと思います。だけどそれより前の平安時代は、結構、女性が輝いていたりするんですよね。

 だから、海外と比較するだけではなく、ぜひ過去との比較もしてほしいです。「どんな特徴がある時代だったら女性が輝くのか?」ということも、歴史をさかのぼれば見えてくることがあります。そういう視点で、日本史を学ぶことも大事だと思いますね。

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東大教授が教える日本の「やばい」偉人ベスト3

本郷和人(ほんごう・かずと)
東京大学史料編纂所教授

東京大学・同大学院で石井進氏・五味文彦氏に師事し日本中世史を学ぶ。NHK大河ドラマ『平清盛』など、ドラマ、アニメ、漫画の時代考証にも携わっている。おもな著書に『新・中世王権論』『日本史のツボ』(ともに文藝春秋)、『戦いの日本史』(KADOKAWA)、『戦国武将の明暗』(新潮社)など。

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