なぜ研修だけでは足りないのか?

また、この流れの特徴として、1~3が4につながるという点です。

「研修などを通じて、4の『学習』機会だけは与えている」という企業の人事担当者の方の話をよく耳にします。たしかにそれも大切なことだと思います。

書籍『若手育成の教科書』32pより転載書籍『若手育成の教科書』32pより転載

しかし、サイバーエージェントでは、1の抜擢や3の失敗なども人が育つために不可欠なもので、一連の流れと考えています。

書籍『若手育成の教科書』33pより転載書籍『若手育成の教科書』33pより転載

1~3のハードルを下げることで機会を増やし、その結果として学習効果が非常に上がるというイメージです。

「成長には失敗が前提条件だったのですね!」

先ほどのような企業の人事担当者の方は驚き、納得されます。

「自走サイクル」という一連の流れであることを理解すると、「成長には失敗が欠かせない」ものだと腹に落ちたそうです。

以前の記事で「『抜擢』こそが、若手が急成長する理由」とお伝えしましたが、正確に言えば「抜擢」は、「自走サイクル」の最初のステップです。

その先にある、「決断」や「失敗」「学習」というプロセスを経ることで、若手は急成長します

まずは「自走サイクル」の第一歩として、「抜擢」する。そこから自走サイクルを回していき、経験値を上げていくことで、結果的にマネジャーとして成長していき、成果も上がっていく。

このようなしくみがあるからこそ、能力や経験を問わず、誰でも安心して、抜擢できるというわけです。

※次回は、誰でもすぐに職場で実践できる、若手が育つ「超シンプルな方法」についてお伝えします。(次回は12月1日公開予定)

曽山哲人(そやま・てつひと)
株式会社サイバーエージェント 常務執行役員CHO 曽山哲人氏

1974年神奈川県横浜市生まれ。上智大学文学部英文学科卒業。1998年伊勢丹に入社、紳士服部門配属とともに通販サイト立ち上げに参加。1999年、社員数が20人程度だったサイバーエージェントにインターネット広告の営業担当として入社し、後に営業部門統括に就任。2005年に人事本部設立とともに人事本部長に就任。2008年から取締役を6年務め、2014年より執行役員、2016年から取締役に再任。2020年より現職。著書は『強みを活かす』(PHPビジネス新書)、『サイバーエージェント流 成長するしかけ』(日本実業出版社)、『クリエイティブ人事』(光文社新書、共著)等。ビジネス系ユーチューバー「ソヤマン」として情報発信もしている。

2005年の人事本部長就任より10年で20以上の新しい人事制度や仕組みを導入、のべ3000人以上の採用に関わり、300人以上の管理職育成に携わる。毎年1000人の社員とリアルおよびリモートでの交流をおこない、10年で3500人以上の学生とマンツーマンで対話するなど、若手との接点も多い。