金相場が底堅い動きを見せている。米国の利上げ前倒し観測などの弱気材料はあるものの、新型コロナウイルスのデルタ株による感染拡大、主要国の中央銀行の大幅な金融緩和、巨額の財政支出を背景としたインフレや金融市場の波乱への懸念が、金相場の押し上げ材料となっている。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)
米景気堅調見通しや積極財政で
長期金利上昇 金は一時1700ドル割れ
金相場は、2021年3月8日に1トロイオンス当たり1676.10ドルと20年6月以来の安値をつけた後、上昇に転じ、6月1日に1916.40ドルと5カ月ぶりの高値をつけた。その後、下落に転じ、6月29日には1749.20ドルの安値をつけた。足元は1800ドル台に乗せて推移している。
振り返ると、3月は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が長期債購入の増額などに積極姿勢をみせなかったこと(4日)、米雇用統計が景気の堅調さを示したこと(5日)、1.9兆ドル規模の米追加経済対策が下院に続いて上院を通過したこと(6日)、そして、米国でのワクチン接種の進展などが長期金利の上昇につながり、金の売り材料になった。
米長期金利は、金相場が直近の底値をつけた3月8日には1.6%前後であったものが、中旬にかけて1.7%台半ばまで上昇したが、それでも金相場は持ち直し傾向だった。その後、再び1.6%台に低下したが、3月末に金相場が再び1700ドルを割り込み、8日の底値に近付いた際には、バイデン大統領のインフラ投資計画の発表を前に長期金利は1.7%半ばに上昇していた。