バレンタインショックの前も後も
「生命保険で節税」はうそ
2019年の法人税基本通達の改定、いわゆるバレンタインショック。これにより「保険で節税はできなくなった」と言われるが、バレンタインショックの前も後も変わらず「保険で節税」という説明はうそである。そのことを具体的に解説しよう。
法人の経営者は、金融機関からの借入金や買掛金など負債を抱えながら会社経営をしている。そのため、万が一、自分が亡くなったり病気になったりして経営できなくなると、役員や従業員とその家族、取引先や金融機関に対して迷惑をかける。そのため、大口の生命保険に加入するケースが多い。
実際、筆者も保険募集人として二十数年に及ぶキャリアの中で、3000社以上の法人経営者に対して保険活用の提案をしてきた。
法人によっては資金繰りが厳しく、必要最低限の保障で保険料もできるだけ安く抑えたいというニーズがある。その一方で、事業が好調で利益が出ており、資金繰りにも余裕がある法人は、単に保障だけを確保する保険(いわゆる掛け捨てタイプ)に加入するわけではない。途中で解約した場合に解約返戻金があるタイプや、保険料を損金に計上できるタイプを選択するケースもある。
このように、法人における生命保険活用の本筋は経営者の保障確保だが、場合によっては生命保険を活用して保障を確保しつつ積み立てをするケースもあるわけだ。もっとも、法人が支払う生命保険料については、保険種類や契約内容などに応じて損金に算入できるルールが細かく規定されている。それが、19年の法人税基本通達の改定により、さらに複雑なルールとなった。
次ページ以降では、保険で節税できるといううそについて、解約返戻金や納税額といった数字をもとに解き明かしていこう。