ロシアが穀物大国になれた理由

 小麦は播種(種まき)と収穫時期の違いで「春小麦」と「冬小麦」に区分されます。春に播種して秋に収穫するのが春小麦、秋に播種して冬を越して夏に収穫するのが冬小麦です。寒冷地域は越冬が困難であるため冬が来る前に収穫を終わらせる必要があることから、春小麦が栽培されています。一方、温暖地域は越冬が可能であるため、冬小麦が栽培されています。

 ロシアは国土が北緯50度を超えるほどの高緯度に位置するため、シベリアやウラル山脈周辺の地域では主に春小麦、カフカス山脈北側の黒土(チェルノーゼム)地帯では主に冬小麦がそれぞれ生産されています。

 2000年代になってからの単収の伸びが著しかったのは、特に後者(冬小麦)であり、カフカス山脈北側の黒土地帯はロシアの小麦栽培の中心地となっています。つまり、黒海沿岸地域は穀物、特に小麦の重要な輸出拠点となっているわけです。積み出し港はノボロシースク港です。

 しかし、ロシアは国内供給を最優先とするため、生産量が少ない場合は必要に応じて輸出規制を行います。特に2004年の輸出関税の適用、2020~11年の輸出禁止などがそれに該当します。

 またロシア国内の穀物価格が世界市場よりも安かった場合は輸出が伸びてしまうため、国内で供給不足に陥る心配があると判断される場合でも輸出関税が適用されます(2008~08年と2015年に行われました)。つまり、ひとたびロシアで穀物の不参が発生すると、世界市場への供給量が減ることとなるのです。