「すぐ報酬を手にする」がカギ

 アメリカの企業の多くは社員の幸福を向上させるプログラムを提供し、減量や禁煙といった習慣を社員に形成させようと試みているが、繰り返しや報酬の取り入れ方が十分ではない。主な報酬は保険料の減額で、所定の期間続ければ現金がもらえるケースもある。

 いずれにせよ、そういうプログラムで特定の行動の繰り返しを教授するものはほとんどない。そのため、習慣はほぼ形成されない。

 では、負の報酬を得られる条件付き契約についてはどうか。これは、何かをすれば(体重を落とせば)嫌なこと(支払い)をせずにすむという条件に同意することを意味する。多くの家庭に見受けられる「卑語罰金入れ」はその変形だと思えばいい。卑語を使ったら、罰金として所定の金額、たとえば1ドルを容器に入れる。これを設置するのは、家族からの冷たい視線に加えて、卑語を使った人のドーパミン反応を抑制し、卑語の使用を控えさせる効果を見込んでいるからだ。このルールなら、(聞こえる範囲に誰かいれば)行動にすぐに結果が伴う。

 だが条件付き契約は、継続して行うのに適さないものが多い。たとえば、州の法曹資格試験を控えているときに、1回で合格するかどうかを兄と100ドル賭ければ、自分が100ドル払いたくないがために、新たに勉強する習慣が生まれると期待する。

 あるいは、ジムに通うと決意し、今月週に3回ジムに行かなかったら、ほしいと思っているジャケットを買えなくなると自分に言い聞かせる。こうしたことをすれば、短期的なモチベーションアップは見込めるだろう。だが、いまあげたような報酬は、新たな習慣の報酬とはならない。

 変えようとしている行動からあまりにも離れすぎていて、特定の行動の繰り返しに結びつくとは限らないからだ。ドーパミンが習慣の関連づけを記憶させる仕組みを踏まえると、すぐに報酬を手にすることが何度も繰り返すカギとなる。

【本記事は『やり抜く自分に変わる超習慣力 悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』(ウェンディ・ウッド著、花塚恵訳)を抜粋、編集して掲載しています】