OPECが増産ペースを速めても原油価格が高止まりする理由Photo:PIXTA

原油価格の高止まりは続きそうだ。ロシアのOPECプラスの協調枠組みへの参加停止や追加増産が検討されても原油価格は低下しそうにない。その基調の強さはどこからくるのか。最近の値動きを振り返りながら分析する。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

3月の高値は超えないものの
足元は120ドル台で推移

 原油相場がジワリと高値をうかがう動きとなっている。3月7日には、一時WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は1バレル当たり130.50ドル、ブレントは139.13ドルと2008年7月以来の高値まで上昇した。

 その後、ブレントは3月16日に96.93ドル、WTIは4月11日に92.93ドルまで下落したが、6月上旬にはWTI、ブレントともに120ドル台まで持ち直す動きとなっている。

 最近の原油相場を振り返ると、4月は強弱材料が交錯し、一進一退だった。

 6日には、先に1.8億バレルのSPR(戦略石油備蓄)の追加放出を発表していた米国と協調して、日欧など米国以外のIEA(国際エネルギー機関)加盟国が計6,000万バレルの石油備蓄の追加放出で合意したこと、EIA(米エネルギー情報局)の週次石油統計で原油在庫が市場予想に反して増加したこと、3月のFOMC(米連邦公開市場委員会)の議事要旨で金融引き締めに向けたタカ派姿勢が示されたことなどが押し下げ材料になった。WTIは5.6%安、ブレントは5.2%安となった。

 11日は、協調石油備蓄放出や、3月28日から実施された中国・上海市での新型コロナ感染拡大を受けたロックダウン(都市封鎖)の延長が弱材料視される状況が続いた。WTIは4.0%安、ブレントは4.2%安だった。

 12日には、前日のロシアの産油量が日量976万バレルと20年7月以来の低水準に落ち込んだと報道されたことや、OPEC(石油輸出国機構)がロシアの供給減を補うのは不可能だと警告したことが相場を押し上げた。WTIは6.7%高、ブレントは6.3%高だった。

 13日は、ロシアのプーチン大統領がウクライナとの停戦交渉についてウクライナの翻意により行き詰まっていると非難したことが原油の供給懸念につながった。

 また、IEAがロシア産原油供給の減少幅が、当初想定よりはゆっくりだが、5月に日量300万バレル程度へと倍増する可能性があると言及したことも強材料になった。WTIは3.6%高、ブレントは4.0%高だった。

 14日は、EU(欧州連合)がロシア産原油の段階的輸入禁止を検討していると報じられたことや、前日に主な国際商社が5月15日からロシア政府系石油企業からの原油等の調達の縮小を計画していると報道されたことが買い材料になった。

 19日は、IMF(国際通貨基金)が世界経済の成長率見通しを下方修正したことを受けて石油需要の鈍化観測が強まり、WTIは5.2%安、ブレントも5.2%安だった。

 25日は、前日夜に中国北京市の最大行政区である朝陽区で全住民・在勤者への新型コロナPCR検査受診の指示があり、この日から開始されたことを受けて、上海市のような厳格な都市封鎖が行われるとの懸念が強まった。ドル高や株安も原油安を促し、WTIは3.5%安、ブレントは4.1%安だった。

 その後、中国の景気刺激策への期待が浮上したことや、EUがロシア産石油の禁輸に動くとの観測が強まったことから、月末にかけて原油相場は上昇した。

 5月は中旬以降、月末にかけて原油価格はロシア産石油禁輸や米中石油需要を材料に上昇した。6月に入っても上昇基調は続いている。その背景を次ページから探っていく。