決算書100本ノック2022夏#3Photo:JIJI

インターネット証券最大手のSBIホールディングス(HD)が、三井住友フィナンシャルグループ(FG)と資本業務提携した。第三者割当増資で三井住友FGが796億円を出資し、SBIHDの株式1割を持つ大株主となる。プレミアムを上乗せしてまで敢えて資本を入れる三井住友側の狙いは判然としないが、SBIHD側の狙いは明らかに「軍資金確保」にある。特集『決算書100本ノック!2022夏』(全21回)の#3では、提携の裏にあるSBIHDの拡大戦略や、急速に悪化する財務状況を解き明かす。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)

「週刊ダイヤモンド」2022年6月25日号の第1特集を基に再編集。肩書や数値など情報は雑誌掲載時のもの。

SBIはM&A攻勢で
借り入れ増大

「ネット証券で手数料がゼロになれば、多くの会社がつぶれていく状況になるでしょう」――。

 5月27日に開かれたSBIホールディングス(SBIHD)の決算記者会見。北尾吉孝社長がつぶやいた一言を、今や“ブラフ”と受け止める者は少ない。

 北尾吉孝社長率いるSBIHDは実際、業界再編に動きだしている。その鍵を握るのが、北尾氏が言う「手数料ゼロ」、つまり株式売買委託手数料の完全無料化だ。

 だが、それを実現するためには、手数料収入に依存しないビジネスの多角化が必要だ。多角化のためには新規事業へ投資を加速しなければならない。投資のためには当然、軍資金が欠かせない。

 三井住友FGと23日に発表した包括資本業務提携の裏には、そんなSBIHD側の事情がある。次ページから、SBIHDの最新戦略と財務状況から提携の「本当の狙い」を解き明かしたい。