対ドルで下落進む円とユーロ、今後の反転で円がユーロに勝てない理由Photo:PIXTA

FRB(米連邦準備制度理事会)の急速な金融引き締めで円安ドル高が進んできた。ユーロも対ドルでは下落基調にある。弱者連合ともいえる円とユーロだが、今後の反転のペースではユーロが円を上回りそうだ。その理由をひもといていく。(SMBC日興証券 チーフ為替・外債ストラテジスト 野地 慎)

円とユーロが対ドルで下落
その理由は米利上げだけではない

 2022年の為替市場はおおむねFRB(米連邦準備制度理事会)による強大な金融緩和政策の巻き戻しを主因としたドル高と説明できるが、もう一つの特徴は「資源(原油)を持つ国と持たない国の通貨パフォーマンス格差拡大」である。

 米国とともにG3を形成するユーロ圏(の主要国)と日本の石油製品自給率がゼロに等しいなか、ドルはより一層買われ、ユーロと円がより一層売られやすい構図となっている。

 自国通貨ベースの資源価格が大幅に上昇することで、ユーロ圏と日本の消費が抑制されるなか、引き続きユーロと円の双方がドルに対して弱含む展開も予想される。

 ただ、ドル高が進み過ぎれば市場のリスク許容度は低下しよう。米グローバル企業の業績に陰りが見られれば、米株安が逆資産効果を促す形で米国の消費は減速し、米国のインフレも鎮静化に向かうと予想される。

 FRBの利上げ終了、利下げが意識され始めるとともにドルはユーロ、円に対して売られそうだが、ドルに対してより一層上昇しやすい通貨はどちらであろうか。

 その答えはユーロである。なぜ、円は上昇ペースでユーロに勝てないのか。次ページからその理由をひもといていく。