3メガバンク最終決戦#6Photo by Kazutoshi Sumitomo

銀行単体の「本業の利益」(業務純益)が3メガバンク最下位に沈む三菱UFJ銀行。特集『3メガバンク最終決戦!』(全9回)の#6では、三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)の国内大企業営業トップである、林尚見・三菱UFJFGコーポレートバンキング事業本部長を直撃。銀行営業の存在意義についてあらためて問うとともに、営業力てこ入れのために着手する“営業網”の深化や、利ざや改善策、投資ビジネスの拡大などについて、余すところなく聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部 新井美江子)

「顧客に期待されない」一大事から脱却へ
銀行復権のキーワードは“原点回帰”

――7月の投資家向け説明会で、林さんが「コーポレートバンキング事業本部長(国内大企業営業のトップ)への着任に際し痛いほど感じたのは、三菱UFJフィナンシャル・グループに対する、大企業顧客による役割期待の低さだ」とおっしゃっていたのが、とても印象的でした。

 私はあまり複雑な人間ではないので、思ったことを口にしてしまうんですよね。現状の当行のありようを見て、率直にそうなんじゃないかと思って発言したのです。

 この状況を打開するためにやるべきことは単純だと思っています。貸出金利や各種手数料をきちんと交渉するなど、銀行で適切な収益を上げるための王道策としてずっと言われてきたことを実行する。

――価格交渉の他には、取るべきリスクを取る、顧客の企業価値向上に資する提案を行うことなどを挙げています。

 そして、それを徹底しようよ、と。実は私の言っていることはそれだけであり、新機軸なんてない。つまり、行おうとしているのは「原点回帰」です。

 政策保有株式にしても、もともとは、株主として企業にガバナンスを利かせようと高度経済成長期に持ち始めたのではないかと思うんですよね。だから私は、政策保有株を保持し続けるならば、その初心に立ち返って株主としての責任を全うするべきだと考えています。

――原点回帰しなければならないほど、組織として緩んでいたということでしょうか。

 いや、逆だと思っています。

「三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)は大企業顧客からの役割期待が低い」――。林尚見・三菱UFJFGコーポレートバンキング事業本部長は、歯に衣着せずにそう警鐘を鳴らす。そして、この危機を打開するために必要だと挙げたのは、驚くほど単純な原点回帰策だった。

いったい、銀行に何が起こっていたのか。

次ページでは、銀行営業の存在意義をあらためて掘り下げるとともに、三菱UFJFGが「銀行復権」のために着手する“営業網”の深化や、利ざや改善策、投資ビジネスの拡大などについて、林事業本部長に余すところなく聞く。