安倍晋三元首相の銃撃事件を発端として、宗教と「政治・カネ」への関心が大きく高まっている。しかし、宗教への無理解が誤解を生む側面も無視できない。そこで、経済メディアならではの視点で新宗教を切り取った週刊ダイヤモンドの特集を再掲し、特集『「新宗教」大解剖』としてお届けする。#3では、保守傾向を強める公明党を支持する創価学会に対し、右派から左派に急旋回した生長の家を取り上げる。政治に深く関わったもう一つの新宗教団体の“帰結”を見る。
生長の家の本部は東京・原宿から
山梨の“森の中のオフィス”へ
山梨県北杜市の八ヶ岳南麓。標高約1300メートルのこの地に立つ生長の家国際本部“森の中のオフィス”は、カラマツやスギの木が生い茂る、まさに森の中にあった。
県道沿いの駐車場に車を止めると、最新鋭の電気自動車(EV)用急速充電スタンドが目に入った。
「一般の方に無料で開放しています。充電スポットとしてインターネットでも紹介されているので、ここでの充電を旅程に組み入れている人も多いようです」。教団職員がそう教えてくれた。
駐車場を見回すと、日産自動車のEV「リーフ」や、プラグインハイブリッド車(PHV)が多く止まっていた。職員の通勤用マイクロバスを含む公用車は、全てEVかPHVに切り替えたという。
駐車場から山道をしばらく歩き、視界が開けた先に立っていたのが、木造建築としては日本最大級の面積を誇る生長の家のオフォスだ。木造2階建て6棟が渡り廊下でつながれ、まるでコテージ型のリゾートホテルだ。
大きく開かれた窓から自然光が取り込まれ、内部は明るく開放的だ。宗教施設特有の陰気くささはそこにはない。
東京ドームの約1.5倍の広さの敷地内を歩くと、そこが日本最先端の巨大な“ゼロ・エネルギー・ビル”であることを思い知らされた。
まずEVへの供給電力を含め、施設内で消費される電力のほぼ全てが、屋根一面に設置された太陽光パネルと木質バイオマス発電装置で賄われる。
電気を蓄えるリチウムイオン電池も400キロワット時と日本最大級の容量だ。オフィス建設中の2011年に発生した東日本大震災に伴う原子力発電所事故を受け、脱原発を視野にオフィス電力の100%自給を目指す計画に変更したという。
清水建設が設計施工した建物自体にも、省エネルギーの最新技術が施されていた。山の斜面を利用した自然通風により夏場の冷房は不要。冬場は屋根上の太陽熱集熱パネルで暖められた空気を床下に蓄熱し、暖房に活用する。消費電力は全て最新鋭のマイクログリッド(小規模発電ネットワーク)でコントロールされている。
さらに一般の組織会員に対してもEV購入時に最大30万円、自宅に太陽光発電や小風力発電を設置した場合は1キロワット当たり2万円の補助金を教団独自で与え、エコな生活への転換を推奨する。谷口雅宣総裁もオフィスまで自転車で“通勤”しているというから、「自然と人間との調和」を目指すという生長の家の本気度はかなり高いといえそうだ。
オフィスの総工費は約50億円。今後は全国の教団施設を、同様のゼロ・エネルギー・ビルに建て替えていく方針という。
生長の家といえば、自民党を後ろ支えする国内最大の右派団体「日本会議」の主要構成員だったことはよく知られている。しかし、1980年代には政治から手を引き、日本会議についても「時代錯誤的」と切り捨てて明確に“決別”を宣言し、右派から左派へ急旋回した。政治に深く関わった新宗教団体として、創価学会との比較から見えてくるその実像とは?