「地元の自治体に入った同級生は外郭団体に入り、高い給料をもらっている。かたや自分が、『国家防衛のために尽くし、帰ってまいりました!』と言ったところで、地元からは求められない。でも、年金がもらえるまでは働き続けなくちゃいけない」

 いま葛城さんは、夜勤をメインとする守衛業務に身を投じている。「時給は最低賃金。同じ職場には、自衛隊からの援護を受けて就職した准曹がいるが、経歴は明かしていない。というより誰とも話していない」と話す。

「職に貴賤(きせん)はない。警備員という仕事に社会的な役割はある。だが、誰にでもできる仕事をただこなしているだけで、やりがいは見いだせない」という。

 2021年に発足した自衛官OB有志による「退職自衛官の再就職を応援する会」世話人を務める元陸将の宗像久男氏は、「退職直後は『元自衛官』としての経験が生かせても、再再就職を目指す60歳代前半ともなると、そのほとんどが“賞味期限切れ”。それなのに『自分はなんとかなるだろう』と高をくくっており、職が見つからない事態に直面してからようやく焦り出す」と話す。

 時代はすさまじいスピードで変わりつつある。そんな中で、「自衛隊は取り残されている」と宗像氏は嘆息する。これからは自衛官自身も「民間で役に立つ」と証明してみせることがさらに求められるようになるが、『とにかく再就職させるんだ』という意識にとどまっている自衛隊の援護のあり方や、自衛官の受け皿が十分とは言えない社会も変わっていかなければならない。

 それこそが、30年以上国家のために文字通り身を賭して働いてきた者たちが、「自衛官でよかった」と生涯一点の曇りもなく思い続けるために必要なことだろう。