業績回復が鮮明となる一方で
運輸セグメントは下方修正

 以降はポイントを絞って見ていきたい。東急は15社中3番目に大きい約218億円の営業黒字だったが、前年同期より約31億円の減益となった。

 東急の本業とも言える「不動産」セグメントが約321億円の営業黒字から約149億円へ約172億円減益。その他のセグメント営業利益は合計約141億円の増益だったので差し引きマイナスとなった。だが前年は大型物件の売却があったため「多すぎた」というのが実際のところで、2019年、2020年同期と比べれば、ほぼ同等の数字である。

 東武は阪急・阪神HDに次ぐ約241億円の営業黒字を計上した。同社の「運輸業」セグメントは大手私鉄でコロナ後、最も早く黒字転換しており、今期も阪急・阪神HDに次ぐ約97億円の営業黒字となった。

 また「レジャー」セグメントは約83億円の営業黒字だった。部門別営業損益は「旅行」が約84億円の黒字、「ホテル」は約22億円の赤字、「スカイツリー」は約14億円の黒字だった。開業10周年を迎えたスカイツリーが好調だったこともあるが、「旅行」が大きな利益を上げていることに注目だ。

 これは決算資料によれば、阪急・阪神HDと同様「旅行需要の完全回復には至っていない中、旅行業で培ってきた予約管理等の後方業務のほか、会場の設営、運営力等を活かしたソリューションビジネスを推進し、自治体等の各種感染防止対策事業や認証事業を受託するなど、旅行販売以外の事業拡大」したためだ。

 その他の特記事項としては、京成電鉄は営業利益44億円、営業外利益59億円、特別利益約79億円を計上している。営業利益については運輸業が黒字転換、営業外利益はグループ会社新京成電鉄の「持分法による投資利益」約57億円、特別利益は9月1日付で新京成電鉄を完全子会社したことで生じた「負ののれん発生益(純資産より低い金額で買収した際に生じる利益)」約92億円が寄与している。

 さて下期の展望はどうなるだろうか。今回、中間決算にあわせて今年度業績予想を見直した事業者が相次いだが、「不動産」はほとんどが据え置きないし上方修正されたのに対し、鉄道を含む「運輸」セグメントは多くが下方修正となった。これはコロナの再拡大による利用控えを考慮したのと、円安や原油高による動力費などの営業費増加を織り込んだものだ。

 物価高騰の主な要因であるウクライナ戦争は停戦の気配がなく、コロナも既に第8波に突入したとの見方もある。これから来る冬をどう乗り切るか、各社の下期成績が来年度を占うことになるだろう。