懸念高まる家計債務問題の深刻化

 そのような“住宅バブル”の裏返しとして、家計の債務残高が急速に増加している。国際決済銀行(BIS)のデータによると、21年7~9月期、韓国の家計債務残高は対GDP比106.0%の過去最高を記録。22年1~3月期も同105.4%と高い水準だ。

 状況としては、支出が収入を上回り、借り入れに頼る家計が増えた。それほど住宅価格や家賃の値上がりは急速だったようだ。日々の生活や債務返済の資金を獲得するために、大手財閥企業の株式や、ビットコインなどの仮想通貨に投資をする人が増えているという。資金を借り入れて仮想通貨を購入し、人生の一発逆転を狙う若者も増えているそうだ。

 懸念されるのは、世界経済の物価高騰、景気後退リスクの高まりによって、家計の債務問題が深刻化する展開だ。韓国銀行は、インフレ鎮静化のために追加利上げを進める必要がある。これまで韓国銀行は、金利上昇により家計の利払い負担が上がって生活に行き詰まる人が増えることを懸念して、慎重に金融政策を運営してきた。しかし、その余裕はなくなりつつある。それに加えて、米国では連邦準備制度理事会(FRB)が3倍速の利上げを進め、株価が下落した。

 その結果、韓国の住宅価格の下落ペースは勢いづいた。韓国全体の住宅価格の下落率は、22年8月が前月比0.14%で、10月は同0.55%だった。担保である資産価値は下落する一方で、家計が借り入れた借金の元本は変わらない。住宅価格下落によって、家計の信用力は追加的に低下するだろう。その結果として、韓国の家計部門では不良債権の増加リスクが上昇する。

 米国やわが国と異なり、韓国経済は本格的なバランスシート調整を経験していない。1990年代初頭の資産バブル崩壊以降、わが国の家計債務は大きく増えていない。しかし、韓国ではアジア通貨危機の発生後から今日まで、家計債務は増加基調をたどった。今すぐそうした展開が現実のものになるとは考えづらいが、家計債務問題の深刻化をきっかけに、一部の金融機関の資金繰りが不安定化する恐れは排除できない。